クローン病や潰瘍性大腸炎の基礎的な医療情報です。


3.薬物療法

クローン病に用いられている薬は潰瘍性大腸炎と同様ですが病変部位により使い分けが必要です。

ペンタサ(メサラジン)
従来はサラゾピリンが使用されてきましたが、副作用が多かったのが問題の1つでした。ペンタサは、有効成分である5-ASA(ファイブアーサー)を分離した製剤です。分離した残りの成分(SP:スルファピリジン)の方に副作用を起こす成分が多いようです。サラゾピリンでは大腸型のクローン病には効果があったのですが小腸病変のあるクローン病では効果がなかったのです。
ペンタサ(5-ASA)
ペンタサは5-ASAをエチルセルロースという多孔性の皮膜でコーティングした5-ASA顆粒を製剤化したもので、5-ASAを徐々に放出するよう設計されています。腸管内の滞留時間を長くするには食後に服用するのが最適と言われています。服用時に口に含んだままにしておくと錠剤は崩壊し顆粒の状態になり不快になりますので、水で一気に飲むようにしたい。

 国内の臨床試験では10.6%(22/208例)に副作用が現れましたが、その内訳は、消化器症状、肝機能検査値異常、皮膚症状などで重大なものはなく、いずれの症状も投薬中止により副作用はなくなっているようです。
 なお、投与初期に下痢が現れる場合があり、その対応としては、一旦服用量を減らし、2-4週間後に増量すると下痢が改善される場合が多いようです。
 海外の報告ではペンタサの4,000mg投与(16錠)/日で著しく改善され、あらゆる病変のクローン病に対しても効果があるそうです。サラゾピリンが2,000mg(4錠)/日で副作用が増加するのに対し、ペンタサは4,000mg(16錠)/日でも副作用の発生の比率が上昇せず、安全性に変わりなく、用量を増やせば臨床効果が得られることが示されています。一方、ペンタサは、1,000mg(4錠)/1日ではプラセボ(疑似薬)とほとんど変わりない。つまり1,000mg(4錠)/1日では飲まないのと変わらないようです。*8
サラゾピリン←サラゾピリン

小腸型または小腸に主病変がある方
ペンタサ1,500-3,000mg(6-12錠)/日で緩解する場合は、ペンタサを継続します。プレドニン30-60mg/日を投与し改善した場合は2週間ごとに減量していきます。血液検査をしてCRP値およびヘモグロビンの悪化、病状の悪化が無いことを確認し医師の指示で減量して下さい。その際に可能であればペンタサを増量していきます。

 プレドニン30-60mg(6-12錠)/日を投与しても症状が変わらない場合、もしくはステロイド離脱困難な場合アザチオプリン#を50-100mg/日、または6MP・イムラン(商品名)を30-50mg/日を併用するようですが、免疫抑制剤は、感染症を誘発しやすいため、筆者は、国内での使用はあまり聞きません。

プレドニン←プレドニン IMURAN 

大腸型または大腸が主病変の方
 サラゾピリン3,000-4,000mg(6-8錠)/日またはペンタサ1,500-3,000mg(6-12錠)/日を継続投与します。4-6週間たっても改善されない場合は、プレドニン30-60mg/日を投与し改善した場合2週間ごとに減量します。注意事項は、上記と同じです。プレドニン30-60mg(6-12錠)/日を投与しても症状が変わらない場合、アザチオプリン#50-100mg/日を併用。症状がそれでも変わらない方は、フラジール750-1,000mg(3錠-4錠)/日を併用します。
 肛門病変のある方は、上記治療に加え、サラゾピリン座薬または、フラジール#を追加するようです。フラジールは、副作用の多い薬なので、500mg(2錠)/日の処方される先生方もいらっしゃいます。
フラジール←フラジール 

 手術適応は、閉塞(イレウス) 、狭窄症状、腹部膿瘍(ノウヨウ)、瘻孔(ロウコウ)、内科的治療に効果が見られない場合や、肛門病変、出血、中毒性巨大結腸症#などです。
 サラゾピリンは、大腸型には、有効ですが、小腸型には無効です。ペンタサは大腸型、小腸型のいずれにも有効です。(詳しくは潰瘍性大腸炎の内科治療の項目参照)
 
国内では、IOIBDスコアーが2以上で、血沈、CRPが異常を示した活動期のクローン病患者を対象とした治験で、1,500mg(6錠)あるいは3,000mg(12錠)の投与量で54.8%(17/31)の改善率が示されています。また病変部位では、小腸型で33.3%小腸・大腸型で66.7%、大腸型で42.9%が中等度以上の改善率で、大腸および小腸とともに効果を認めたと報告されています。

 欧米では、副腎皮質ホルモンの局所の際に生じる長期間・大量投与時の全身性の副作用を極力少なくしたアンティドラッグと言われているブデソナイド(Entocort)6mg/日を回腸盲腸型のクローン病患者に1年間経口投与したところプラセボ(疑似薬)に比べ有意に再燃を抑制したとの報告がみられます。
 ブデソナイドは、皮膚・粘膜に対し刺激性の少ないグルココルチコイド(抗炎症作用をもつステロイド)であり、吸収が少ない上に急速に分解する前に粘膜直接作用すると考えられています。注腸投与での薬効はペンタサやハイドロコルチゾン(抗炎症を有するステロイドホルモン)と同様でプレドニン注腸より優れているという報告や飲み薬としてのクローン病への有効性もあると言われています。*6
クローン病には経口で9mg/日朝1回投与が優位に効果があるとされております。2001年にアメリカでクローン病に認可されました。日本での導入の見込みは無い。(AS社が国内に導入する気が無いとのうわさである。)pH依存で、胃酸を回避し十二指腸から徐々に溶けていく設計のセルロースコーティーングがなされているため潰瘍性大腸炎には、目的部位への吸収量が経ると考えられる。腸管粘膜より吸収され、作用し肝臓で代謝されるため、静脈を通じた副作用が少ない。肝臓に負担を掛けるので、肝機能が悪い場合は適用を見合わせるべきである。
長期服用すると、白血球が著明に増加する。3年服用後の長期有用性は無いと言われており、私自身も3-4年で効かなくなった。しかしながら、狭窄のある患者さんにとってレミケードより第一選択薬となり得る優れた薬である。
ブデソナイド(エントコート) ブデソナイド(エントコート)注腸剤
Entocort 3mg
ブデソナイド
Entocort Enema
3mg ,115mL


 ステロイドホルモンの副作用を軽減する目的で、ステロネマ<製造発売元:テイコクメディクス(株)>、プレドネマ<製造発売元:(株)キョーリン>という名称で注腸タイプが商品化されています。注腸投与でも相当量のステロイドが吸収されると言われています。口から飲むステロイドに計算するのにどのくらいが吸収されるか?というと1/2から1/3くらいらしい。クローン病では、瘻孔(ロウコウ)のある場合はステロネマを使用すべきではないと言う意見が多いようです。理由は感染に弱いこと、ステロイド潰瘍をつくることにより治りが遅れるということですが、炎症を押さえる即効性に期待し使用されるケースもあります。いずれも、保険適用は潰瘍性大腸炎となっております。同様に、ペンタサを注腸タイプにした注腸製剤も潰瘍性大腸炎の適用となっております。
 
免疫抑制剤としてアザチオプリンやその生体内活性型の6-MPが使用されていますが、海外の報告では、活動期のクローン病に対して単独での有効性は証明されていないのですが、ステロイドと併用するとステロイド単独より有効率が向上するとされています。しかし、免疫抑制剤の長期予後の結論は出ておらず、発ガンの危険性があるので安易には使えないものと思います。*3
 
新しい治療としてサイトカインの一種であるTNF-αに対する抗体療法は1回の静脈投与でも約4ヶ月間有効であったと言われています。抗CD4抗体を利用したT細胞を抑制する療法やエイコサノイド抑制剤や魚油を使ったN3脂肪製剤の抗炎症性に着目した治療、活性酸素を除去するレシチン化SODなどが治験されているようです。

抗TNF-α療法とは(レミケード)
 クローン病の腸管内に炎症のサイトカインが多く発生していることが判りその他数々の炎症サイトカイン(IL-1β、IL-6、IL-8、TNF-α)の産生の上流で制御しているのがTNF-αであることが判ってきました。TNF-αを押さえ込めば、クローン病の病状が改善するのではないかと考えられています。ILをインターロイキンと呼びます。

 遺伝子組み替え技術により合成されたのが抗ヒトTNF-αキメラ抗体と呼ばれています。 具体的にはマウスにヒトTNF-αを投与してマウス抗TNF-αモノクロナール抗体を作成し、免疫抗原を低く押さえ、体内の白血球をはじめ免疫系統に異物と認識されないように作られております。(ヒト75%、マウス25%)開発コードがcA2と呼ばれていたもので、薬剤名はレミケードと呼ばれています。米国セントコア社により開発され日本でも田辺三菱製薬株式会社より輸入販売されています。米国ではFDA(米国食品医薬品局保健サービス局)で1998年に認可されました。国内は2002年4月に薬価収載され、発売は2002年5月より発売が開始されました。1回単独投与で承認され、市販後調査、連続投与治験を経て、2007年11月13日に維持療法の効能追加を取得した。1回注射した後、血中濃度が高く保たれるため、2週間から最大4ヶ月の効果が持続するようです。患者さんにより効果継続期間の差はあります。

 レミケード以外にもリウマチで認可されている抗TNF-α治療薬としてはエンブレル(エターナルセプト)というTNF-α型とTNF-β型に結びつき、中和する薬があります。これは、自分で注射を出来る自己注射と呼ばれる方法で、2008年4月より在宅自己注射の規制が制限が緩和されるようです。

レミケードなどのキメラ抗体に含まれるマウス由来を排除した100%ヒト型のTNF-α抗体であるアダリムマブ<開発品コード:D2E7:製造販売元エイザイ(株)>やIL6の受容体をブロックする アクテムラ<開発コードMRA/製造販売元:中外製薬(株)>など、継続投与時のリスク軽減が可能な抗体医薬が国内上市される可能性があります。アトリズマブは2008年中にリウマチで適用拡大が認可される見込みです。

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レミケード添付文書 ←レミケード添付文書 (日本未上市時のもの)

参考文献
*1.青柳邦彦、平川克哉、飯田三雄 他 炎症性腸疾患 長期予後(2) 胃と腸 第32巻第3号 421-430 1997増刊号
*2.横山善文、宮田充樹、土田研司、他 炎症性腸疾患 (1)内科治療 胃と腸 第32巻第3号 377-388 1997増刊号
*3.屋代庫人、本間直人、戸田潤子 他 炎症性腸疾患の診断と治療 診断と治療 Vol.85 N0.6 919-930 1997
*4.炎症性腸疾患の長期経過 高添 正和 河南 智晴 診断と治療 Vol.85 No.6 949-954 1997
*5.福田能啓 他 クローン病の在宅経腸栄養療法におけるコンプライアンスの低下とその対策 JJPEN 15: 1183-1188. 1993
*6.棟方昭博、福田真作 IBDの新しい治療法と将来の治療 診断と治療 Vol.85 No.6 933-938 1997
*7.星野恵津夫、大林隆晴 他.栄養療法について(1)完全静脈栄養法(TPN) 臨床消化器内科 pp.39-46 Vol.13 No.1 1998
*8. 北野厚生 クローン病に対する薬物療法の実際消化器科 第25巻 第3号 pp.314-319 1997
*
9Diagnosing small bowel Crohn's disease with wireless capsule endoscopy.
 Fireman Z, Mahajna E, etal. Gut. 2003 Mar;52(3):390-2.


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