クローン病や潰瘍性大腸炎の基礎的な医療情報です。


薬物治療*2

 潰瘍性大腸炎の治療にはこの50年来、サラゾピリンと副腎質ステロイドが主として使用されてきました。

サラゾピリンについて
 サラゾピリンは軽症、中程度の方の緩解導入への第一選択薬として使用されます。またステロイドの減量、離脱や再燃防止の目的でも使用されます。
サラゾピリンは腸内細菌で有効成分である5-アミノサリチル酸(5-ASA)と副作用である成分(スルファピリジン)に分離されます。副作用の成分のほとんどが大腸粘膜で速やかに吸収され、主として肝臓で代謝された後、尿中に排出されます。
一方、有効成分である5-ASAはほとんど吸収されず、大部分が便として排出されます。5-ASAは、アラキドン酸#代謝に作用し、サイトカイン産生の抑制などの抗炎症作用を有し、活性酸素や活性酸素窒素代謝物の消去作用があります。直腸炎型には、サラゾピリン座薬が用いられます。
サラゾピリン SASP←サラゾピリン

サラゾピリンの副作用にはどんなものがあるか
 発現頻度13-42%と最も多く胃や腸に関して、はきけ、嘔吐(オウト)、食欲不振、上部腹痛、全身性のもに関しては、1-15%に見られ倦怠感、頭痛、めまい、関節痛、発熱があります。粘膜・皮膚に関しては、0.5-5%に見られ皮膚発疹、口内潰瘍などがあります。血液に関しては0-3%に見られ大赤血球症、白血球減少、溶血性貧血、葉酸欠乏があります。そのの副作用として男性不妊があります。

ペンタサ(メサラジン)
 1996年より保険適用になりました。日清キョーリン製薬(株)<現キョーリン製薬(株)>より発売され、サラゾピリンの有効成分である5-アミノサリチル酸(5-ASA)を分離し、副作用である成分を取り除いた製剤である。小腸上部から直腸に至るまで5-ASAを徐々に放出するよう、直径1mm程度の顆粒をエチルセルロースの膜でコーティングしたもので、潰瘍性大腸炎のみならずクローン病の特に小腸型にも期待されています。サラゾピリンと比較し副作用の少ない安全な薬です。

 日本での臨床治験成績では軽・中等度の活動期の場合は、投与量750-2,250mg(3-9錠)で内視鏡改善率75.3%(70/93)、全般改善度も70%(78/111)でサラゾピリンと遜色ない臨床効果を示しています。サラゾピリンが無効な患者に対してもその有効性が確認されたとの報告もあります。さらに緩解期の潰瘍性大腸炎の緩解維持率も6ヶ月後で76.7%、1年後で73%でした。*3
ペンタサは小腸で作用・吸収された後、大腸には45%が到達するとされています。これは、1錠(250mg)当たり約110mgに相当します。一方、サラゾピリンは、ほとんど(90%以上)が大腸に到達しますが、5−ASA量に換算すると1錠当たり約170mgとなります。つまり、ペンタサは、サラゾピリンの約1.5倍の錠数を飲むと問題なく作用し、副作用も少なくなります。
ペンタサ 5ASA
 現在、潰瘍性大腸炎に対する一日の最大処方可能量は9錠(2,250mg)、クローン病の最大処方可能量は、12錠(3,000mg)です。つまり、サラゾピリン8錠(4,000mg)飲んでいる方は問題なく、それ以上のサラゾピリンを飲んでいる方には、残念ながら効果は少なくなると言うことになります。

調子の変動のある方は、良い状態のときにも、最大投与量で処方していただき、残りは貯めておくのです。それで、調子が悪くなると今までの経験でサラゾピリンの投与量の錠数に1.5を掛けたペンタサの錠数を飲まれるのも一つの自己防衛策です。つまり、潰瘍性大腸炎の患者さんにとってペンタサの最大処方1日可能量を増やす必要があるということです。海外ではクローン病、潰瘍性大腸炎とも4,000mg(ペンタサで16錠)の投与量が処方され、緩解導入や維持が可能だそうです。これはサラゾピリンに換算すると8g/日以上となります。*6.*8
ペンタサ注腸は2003年6月に発売され好発部位である直腸、S状結腸や下行結腸に充分到達させる製剤です。サラゾピリンやペンタサと併用して用いられることがあります。
ペンタサ注腸 大腸 http://mimibukuro.org/
ペンタサ注腸剤


ペンタサの副作用
 サラゾピリンに比較にして副作用は少ないのですが、海外で10年間使用された中での副作用報告によると1%以上の発生頻度のものとして発疹、蕁麻疹(ジンマシン)等の皮膚疾患、下痢、腹痛、嘔吐(オウト)、はきけ、頭痛で0.01%-0.1%未満発生頻度のものとして膵炎、アミラーゼの上昇が起こります。

 活動期の潰瘍性大腸炎に対するペンタサ投与群(284名)とフラセボ(疑似薬)(90名)投与群のそれぞれの副作用頻度は、ペンタサ投与群で頻度が16%、フラセボ投与群で22%となっています。

 上記、二重盲検試験の結果、ペンタサの副作用頻度は「下痢」と「気持ち悪くなる」のがそれぞれ4.6%、「発疹」と「食欲不振」が、それぞれ1.8%、「頭痛」が2.5%、「下血」と「腹痛」および「発熱」がそれぞれ1.4%、「その他」が0.4%となっています。*6

 海外でのペンタサとサラゾピリンの同容量での二重盲検試験#での副作用の発現比率は、ペンタサ投与では12%に発現し、サラゾピリン投与群に28%発現したという比較もあります。*7

(クローン病の内科治療とは:薬物治療の項目参照)


副腎質ホルモン*2

 プレドニン(酢酸プレドニゾロン)、ベタメタゾン(=ベタメサゾン)が一般的に用いられ、アラキドン酸#の産生を抑制し、各種炎症の根本から押さえてしまう抗炎症作用を示すという極めて即効性があり優れた薬ですが、反面、みなさんもご存知の数々の副作用があります。一方、Tリンパ球機能を抑制して、免疫グロブリン産生を抑制し、免疫抑制作用を発現すると考えられています。

 ステロイド治療は、重症度・活動病変範囲による適正な初期治療薬の選択、再燃防止と副腎機能低下を考慮して徐々に減らすようにします。ステロイドにより本来の副腎の機能を押さえているために、勝手な自己判断による減量は極めて危険です。医師の指導のもとに減量しないと、「リバウンド」による病状を悪化させます。
大量投与や長期投与による副作用に十分注意することが必要です。
プレドニンPSL←プレドニン 1錠5mg

 海外では、局所に作用した後、吸収され、血中消失速度が早く肝臓で代謝、不活性化される新しいタイプが開発されています。ベクロメタゾン、 dispropionate, ブデソナイド, tixocortol pivalateなどがあります。全身的にはほとんど副作用が少なく欧米では注腸療法に応用されています。
(クローン病の内科治療とは:薬物治療の項目参照)

 ブデソナイドの注腸療法による比較試験と用量依存性試験では、プラセボ群とあきらかに有効性が認められるが、プレドニンとは差がなく、用量依存性がないようです。*13

 ステロイド製剤であるリンデロン座薬は、直腸炎型に使用されます。ステロネマというステロイドを使用した注腸液があり、直腸炎や左側大腸炎に有効です。

ステロネマ
100ml中にリン酸ベタメタゾンナトリウム中3.95mlを含むステロイド注腸剤です。
製造発売元はテイコクメディックス(株)です。
全長31cmのチューブの容器になっています。使い方は、上図左側を直腸に数cm挿入し、ステロイド液を直腸に直接注入します。注入後は腸全体に液が行き渡るよう、左下そして仰向けに向き、右下になり最後にうつ伏せと身体を回転させます。体内にいれるとすぐ漏らしそうになるのですが、出来れば30分は我慢しないと薬の効力が少なくなってしまいます。注入前にお湯で人肌に暖めた方がお腹での刺激がすくなくなるようです。挿入前にたっぷり粘膜麻酔剤のキシロカインを塗ると、異物を入れたときに生じる直腸反射を押さえることが出来るので便意をコントロールできますので試してみて下さい。通常 成人1回1-2個/日。最大処方量は1回注入に1個を使い1日2回の使用として(朝晩)14日分の投与が可能となっています。100mlタイプと50mlタイプがあります。

 ステロネマ←ステロネマ

副作用の少ないプロパデルムクリームの使用例
 潰瘍性大腸炎患者のうち合併症により通常のステロイド投与が困難と思われる症例4例(糖尿病2例、肺結核、骨粗鬆(コツソショウショウ)症とステロイド離脱をしていくうちに再燃した6例に行ったそうです。
 病変タイプは、左側大腸炎型7例、全大腸炎型3例、病型別では、再年緩解型8例、初回発作型が2例です。
 
投与方法は、1日当たりプロパデルムクリーム10g前後をトラネキサム酸に溶かして注腸しているようです。プロパデルムクリーム10gで有効成分のプロピオン酸ベクロメタゾンが2.5mgだそうです。それを1日に1-2回に分けて注腸するようです。 ステロイドを減らしている最中に再燃した例では、ステロイドの服用量を減らさずに、臨床症状の改善を待ってからステロイドを徐々に減らしました。 効果の判定は、排便回数や血便などの臨床症状と内視鏡を確認して行いました。臨床症状の改善の結果は、著しく改善した例が5例、改善が2例、変化なしが3例でした。 内視鏡の確認では、著しく改善したのは2例、改善は4例、変化なしが4例でした。糖尿病などの合併症の悪化もなく、副腎機能の異常が現れた症例もなかったようです。*13
プロパディルムクリームは皮膚科領域で軟膏として認可されています。協和発酵(株)より発売されています。製造販売元は日本グラクソー(株)となっています。

ステロイドの種類
有名な薬にプレドニゾロンがよく使われます。コルチゾンという薬もステロイドの1種ですが、プレドニゾロンの方が3-4倍の強さを持っています。デキサメタゾンと言う薬は、プレドニンゾロンの約7倍。コルチゾンの30倍の強さを持っています。ステロネマに使用されているベタメサゾンは、コルチゾンの40倍の強さを持っています。プレドニゾロンの10-13倍の薬効を持っています。上記治験のベクロメタゾンは、デキサメタゾンの約500倍の活性を持っているのにも関わらず副作用が少ないようです。


 難治性の潰瘍性大腸炎で上記のデキサメタゾンの注腸を注腸しても効果がなく2回のステロイド動注療法を行うが効果がなかった例に、虫垂瘻{いわゆる盲腸のところに瘻孔(ロウコウ)を作成し}から、プロパデルムクリーム40g/日を200mlの微温湯に溶かして、カテーテルを使用して投与した例があります。1時間当たり10mlで落とし毎日持続投与されました。この治療と同時にプレドニゾロンの全身投与を徐々に減らし、中心静脈栄養は継続されたようです。入院直後は、静脈投与でステロイド最大量1日80mg、サラゾピリンを1日4g(8錠)の服用だったそうです。この治療後次第に排便回数も減り、血便の自覚も減り、4週間後に下痢は消え、CRPと赤沈もほぼ正常化したそうです。内視鏡的に観察しても緩解期と判断できたようです。この時点でACTH刺激試験を行ってみると副腎機能抑制は見られなかったそうです。プロパデルムクリームを少しずつ減らしながら治療を継続しましたが、再発、再燃の兆しがなかったため、4ヶ月後にカテーテルを抜いて自然閉鎖後退院されたそうです。*15

ステロイドの副作用
 にきび、ムーンフィス(顔が満月状になる)、多毛症、骨粗鬆症(コツソショウショウ)、大腿骨頭壊死(ダイタイコツコツトウエシ)や、関節痛、傷の治りが遅い、血が止まりにくくなります。耐糖異常、感染症、精神症状など多数あります。

ステロネマに同封されている製薬会社の注意書きを参考にしています。(2007年10月改訂版)
眼に関する注意は、この版から追加されています。
肝心の頻度は、5%以上または頻度は不明です。
[重大な副作用]白内障を来すことがあるので、定期的に検査をすることが望ましい
1. アナフィラキシー様症状
2. 感染症になりやすい、感染症の悪化
3. 副腎皮質機能不全、糖尿病
4. 消化性潰瘍、消化管穿孔
5.膵炎
6. 精神変調、うつ状態、痙攣(ケイレン)
7. 骨粗鬆症、大腿骨及び上腕骨等の骨頭無菌性壊死(コットウムキンセイエシ)
   ミオパチー(筋肉が侵される病気の総称。)
8. 緑内障、白内障: ステロイド連続服用により眼圧が上がります。
9. 血栓症(血管が詰まる状態)
10.喘息発作の悪化:


[その他の副作用]
1. 発疹等内分泌
2.月経異常、クッシング症候群様症状等
3. 消化器:下痢、気分が悪くなる/嘔吐(オウト)、胃痛、胸焼け、腹部膨満感、のどの渇き、食欲不振、食欲増進等
4. 精神神経系:鬱(うつ)もしくは躁(そう)、不眠、頭痛、めまい等
5. 投与部位:局所的刺激症状(排便感増強、熱感等)
6.筋肉痛、関節痛等
7. ムーンフェイス、野牛肩、窒素バランスの異常、脂肪肝等
8.浮腫、血圧上昇、低カリウム性アルカローシス(pHを上昇させる病的な過程をいう)
9. 眼:網膜障害、眼球突出等
10. 白血球増加等
11.ニキビ、多毛、脱毛、色素沈着、皮下出血、紫斑、発汗異常、顔が紅くなる。創傷治癒障害、皮膚が薄くなったり脆くなったりする
12.発熱、疲労感、ステロイド腎症、体重増加、
13.精子数及びその運動性の増減、創傷治癒障害、皮膚・結合組織の菲薄化・脆弱化、しゃっくり

ACTH(コルチコトロンビン)
 副腎皮質刺激ホルモン、血中濃度は6〜8時に最高となり、以後だんだんと減り0時に最低となります。通常、潰瘍性大腸炎の重症患者さんに使用されます。あるいは、ステロイドの効果の低い時、もしくはステロイド減量時に副腎の機能を活性化させる意味で使用することがあります。*12

3.病状の程度による薬物治療
4.白血球除去療法と 栄養療法の位置づけ


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