クローン病や潰瘍性大腸炎の基礎的な医療情報です。


白血球除去療法、顆粒球(カリュウキュウ)吸着療法とは

膠原病(コウゲンビョウ)や自己免疫疾患などで行われてきた白血球除去療法が、潰瘍性大腸炎の治療に応用され、高い有効性が確認されています。兵庫医科大学第4内科澤田先生が数多くの発表されています。極細繊維不織布フィルターを用いた体外循環白血球除去器により潰瘍性大腸炎患者の白血球/ 顆粒球を一旦取り除いたものを体内に返血します。
 いわば、血液透析のようなものです。フィルターを通過させることにより、活性化された白血球を取り除くという原理です。適応は、活動期の全大腸炎型、左側大腸炎型で、従来の薬剤に効き目の無い症例、あるいは副作用がある25例に治験したところ、著しく効いた症例が8例(32%)を含め、21例(81%)が有効と判定され、維持療法でも76%に持続的な有効性が認められています。尚、この療法後の再発例を検討すると、メモリー細胞の存在することにより、誤ったプログラムが書き込まれた白血球が作られ悪さをすると思われます。
 
顆粒球、単球を吸着させ血液から除去する吸着器<アダカラム:(株)JIMRO(ジムロ) GCAP>と、フィルターに顆粒球、単球、リンパ球、血小板を吸着して除去するフィルター(セルソーバー 旭化成クラレメディカル:LCAP)の2種類が活動期の潰瘍性大腸炎の治療に対して保険適用になっています。(ただし、ステロイド治療抵抗性の重症または中等症の全大腸炎型および左側大腸炎型の患者を対象とします。)特定疾患医療費助成の対象者(直腸炎型除く)で無い場合は、3割負担となります*

 治療は基本的には1回約60分の治療を週に1回の間隔で5-10回行います。患者さんの病状にもよりますが、必ずしも入院でなければ受けられない、という治療ではありません。顆粒球吸着療法(GCAP) の有効な割合は72.7% (40例/55例)でした。LCAPの有効性も約70%程度です。

保険適用について処置のパターンを患者様用に書き換え
1. 白血球除去療法は、潰瘍性大腸炎の重症・劇症患者及び難治性患者に対して、活動期の病態の改善および緩解導入を目的として行った場合に限り、一連の治療につき2クール迄実施可能である。
2. 1クールは週1回の血球除去を限度として、5週間に限る。ただし、劇症患者については、第1週目に限り週2回実施出来る。
3. 治療を実施した場合は、診療報酬明細書の摘要欄に一連の当該療法の初回実施日および初回からの通算実施回数(当該月に実施されたものを含む)を記載する。

補助療法としての位置づけの栄養療法

 潰瘍性大腸炎の治療では、薬物療法が主であり、補助的に栄養療法が行われます。成長盛りの子供には、栄養状態を良い状態に維持するためにも経腸栄養剤は必要と思われます。 栄養状態の悪化は、まず粘血下痢、腹痛がある時には食欲不振が加わります。食物を食べることによりさらに下痢の回数が増えたり、腹痛が増強したり、栄養状態が悪化します。炎症時には、腸管の潰瘍面からのタンパクが漏れ出したり、持続出血したり、下痢による水分の喪失とともに電解質が失われます。これは、粘膜損傷により、 Na(ナトリウム)および水の再吸収障害があり、いわゆる下痢の状態となります。 活動期は腸管を休ませる必要があり、基本的には消化吸収が良く、体力維持に役立つ高タンパク、高糖質、低残渣(ザンサ)である食事が望ましい。特にN-6系の脂肪は炎症を起こす要因にも繋がるとされている。クローン病と違い食事を摂取することによる悪影響はないとされていますが、脂っこい食事、食物繊維、消化の悪い肉類、辛い食品などは下痢を誘発してしまう要因になる可能性があります。患者さんご自身が経験的にわかっている、食べると調子が悪くなる食品、食事メニューは避けたほうが望ましいようです。*11

 潰瘍性大腸炎は、大腸粘膜だけの病気と言われていますが、小腸粘膜を調べてみると(生検検査)、炎症時には絨毛{(ジュウモウ):ヒダ}が短くなっているそうです。それと乳糖不耐症の方が多く見られますが、本当に乳糖不耐症かは負荷試験をした上で決めるべきだそうです。*9
 炎症時の生体は発熱や組織修復のために健康なときよりも多くのエネルギーを必要とします。治療薬に使われるサラゾピリンは葉酸の吸収を妨げることが判っています。葉酸が欠乏すると貧血になります。

 栄養評価の指標としては、赤血球数、Hb(ヘモグロビン値)、血清タンパク、アルブミン濃度、総コレステロール値が、血液検査で調べられます。
正確に評価するには、主治医に任せましょう。

 潰瘍性大腸炎の軽症や中等症ではでは薬物療法が中心となりますが、重症例では低栄養の状態の改善や栄養状態の悪化を防ぎ腸管を刺激しないために経腸栄養剤を使用されます。

 経腸栄養剤を飲んで下痢をしないか注意する必要があります。初期の下痢であれば、腸管粘膜を保護するタイプの下痢止めが有効です。タンニンサンアルブミン#や次硝酸ビスマが有効と言われています。

 病態悪化するようであれば、即刻、経口からの食事を中止し、中心静脈栄養(IVH#もしくはTPN#)に切り替えます。中毒性結腸#を伴う場合や劇症の場合は、最初から中心静脈栄養(IVH#もしくはTPN#)を行います。ステロドの強力静注療法や動注療法は効果があります。病態が改善されれば、中心静脈栄養(IVH#もしくはTPN#)から消化器用の病院食(脂肪制限食病院により胃潰瘍食等)に変更するのですが、いきなり病院食に変えても腸管がびっくりするのでエレンタールもしくはエンシュアリキッドなどを使用するようです。いずれも食物繊維(ペクチンなど)が入っていないため、下痢をしやすいので、1日2g位水溶性食物繊維を添加すべきだそうです。*10
最近の傾向ではもっと多くの食物繊維を入れた方が良いという意見も聞いておりますがなかなか具体的な数字が出ていないようです。個人差があると言うことでしょうか?

尚、エンシュアリキッドは脂肪が多いために腸管を動かす原因になるという欠点がありますが、味はエレンタールと比較すると良いようです。ラコールという経腸栄養[大塚製薬(株)]が保険適応になりN3オイルを使用しています。この栄養剤は缶ではなくアルミパックのような形でコップなどに移し替えをしないと駄目なところが不便を感じます。とは言ってもエンシュアリキッドより良いので主流になるのかも知れません。
一方、「エレンタールの最大の利点は、脂肪をほとんど含まないことです。」そのことにより、腸管の蠕動(ゼンドウ)運動が押さえられます。
タンパク質がアミノ酸に分解されているので、潰瘍性大腸炎の方ならほとんど吸収できることも利点です。他には腸管粘膜の栄養源であるグルタミンとアルギニンが含まれていることなどが挙げられます。エンシュアリキッドはタンパク質が分解されておらず、グルタミンやアルギニンは含まれていません。


参考文献
*1.屋代庫人、本間直人、戸田潤子 他 炎症性腸疾患の診断と治療 診断と治療 Vol.85 N0.6 919-930 1997
*2横山善文、宮田充樹、土田研司、他 炎症性腸疾患 (1)内科治療 胃と腸 第32巻第3号 377-388 1997増刊号
*3.棟方昭博、樋渡信夫、武藤徹一郎、他 メサラジン経口放出調整剤N-5ASAの潰瘍性大腸炎におけるサラゾファピリン不耐性患者に対する有用性。 薬理と治療22(Suppl.):S2585-2605、 1994
*4.福島恒夫、鬼頭文夫、小尾芳朗、他 炎症性腸疾患 (1)外科治療 胃と腸 第32巻第3号 389-395 1997増刊号 
*5.樋渡信夫、早川知彦 潰瘍性大腸炎、内科治療:最近の話題 大腸肛門誌 48:1144-1152, 1995
*6.日比紀文 サラゾスルファピリジン誘導体の開発と海外の臨床応用 BIO Clinica 1997.12.5 pp.59-62
*7.棟方昭博 炎症性腸疾患におけるメサラジン(5-ASA)の臨床的意義 Biomedicine & Therapeutics Vol.30 no.3 pp29-33 1996.3.10
*8.北野厚生 クローン病に対する薬物療法の実際消化器科 第25巻 第3号 pp.314-319 1997
*9.細田四郎、馬場忠雄、近持 信夫 潰瘍性大腸炎の栄養療法 JJPEN: Vol.7, No.2 pp.273-278 1985
*10. 馬場忠雄、近持 信夫 炎症性腸疾患患者の栄養管理の現状と今後 JJPEN: Vol.12, No.12 pp.1477-1480 1990
*11.長廻 紘、澤田俊夫、今井陽一他 潰瘍性大腸炎の内科療法内科 Vol.82.No.2 1998 Aug pp.276-281
*12. 岩井淳浩、伊藤和郎、潰瘍性大腸炎の治療の最先端 治療の総論 臨床消化器内科   Vol.12, No.10.1997 pp.1399-1406
*13. 牧山和也、竹島史直、ステロイドの使い方 (1)経口 潰瘍性大腸炎の治療の最先端 臨床消化器内科 Vol.12, No.10.1997 pp.1407-1413
*14.松本誉之、青木哲哉、北野厚生 潰瘍性大腸炎に対するステロイドアンティドラッグの注腸療法 炎症性腸疾患の診断と臨床 pp.174-175 1998
*15.天野角哉、松本主之、飯田三雄 虫垂瘻からのベクロメタゾン局所投与が著効した潰瘍性大腸炎の1例 炎症性腸疾患の診断と臨床 pp.172-173 1998

16.(株)JIMRO公式サイト内 顆粒球除去療法について
17.UC WAVE ONLINE

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