クローン病や潰瘍性大腸炎の基礎的な医療情報です。


この病気について・皆様へのご理解を  
 クローン病、潰瘍性大腸炎は、腸管を主とする難病で、腹痛・下痢・血便・下血・発熱・体重減少等の症状があります。患者数は特定疾患受給者証の数で見ると、クローン病で23,188人(2004年度*1)、人口10万人あたり約18.3人のクローン病患者さんがいることになりますが、欧米に比べると10分の1前後です。
潰瘍性大腸炎で77,073人(2002年度末*1)、米国の100万人と言われている患者数に比べるとクローン病と同様に10分の1以下です。両疾患の増加は食生活の欧米化に伴って年々増加しています。炎症性腸疾患と定義される病気はまだ他にもありますが、
このサイトでは、クローン病と潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)を炎症性腸疾患(えんしょうせいちょうしっかん)と定義しております。炎症性腸疾患を英語で言うとinflammatory bowel diseaseと言いその略語がIBDと言われております。この略語が短くて判りやすいので、IBDという名称が医療関係者だけでなく患者様の間でも普及した用語となっております。
参考までに患者会の名称にも多く使われており、患者数の多い病院ではIBD外来を標榜しているところもあります。 いずれも未だ原因不明で、治療法が確立されておらず厚生労働省の特定医療疾患に指定されています。現在解明されている原因として腸管の免疫異常が深く関わるのでは無いかと言われています。本来人間が食事を食べる時に体内に入った食物を「異物」として認識していません。しかし破綻した免疫システム(白血球やマクロファージやサイトカイン#など)は「食物を異物抗原」として攻撃するため腸管や消化管が傷害されます。薬剤による治療法はその場しのぎの対処療法であって完治までは至らず、緩解(かんかい)(調子が良くなる状態)と再発を繰り返します。緩解と再発を繰り返すことにより、傷ついた粘膜が良くなる仮定でひきつれをおこし、再発を起こして粘膜が浮腫(むくんで)また粘膜が修復されてひきつれを起こしていくと瘢痕化狭窄(はんこんかきょうさく)をおこし、更には狭窄部位が肥厚(ひこう)していきます。狭窄が酷くなると食物の通過障害を起こしいわゆるイレウスの状態になります。最終的には閉塞してしまい、そうなると手術適応になります。炎症が起こっていると腸管内や血液中は免疫システムが活性化された状態になっています。こういった本来は、体内に入っていく細菌を攻撃し、自己防衛の役割を果たす免疫系等が異常をおこし、攻撃すべき対象で無い食事等を抗原として自分を攻撃する病気を自己免疫疾患と呼びます。
 
 クローン病は、口から肛門まで消化管全般に起こる病気で、手術をしても再発しやすいと言うやっかいな特長があります。現在のところ、消化管に負担をかけない成分栄養剤を服用するのが一番無難な治療法と言われております。
 再手術により腸管が短くなっていくために如何に手術を避けるかが重要なポイントになります。発症年齢も低年齢化の傾向があり、食べ盛りの成長期の子供さんも多く、食べたいものを我慢しなければならないという患者自身の「自覚と忍耐」が必要になってきます。また子供を持つ親であれば、過剰な心配にもなり、どう子供と接すれば良いのか?こういった悩みも多くなると思います。この病気では食事療法が重要で啓蒙が必要となり、重要性を動機付けさせる側は、医師だけでなく、栄養士および看護師のしっかりした認識が必要となります。日・米では食事療法と薬物療法の考え方が大きく異なります。 
          日本          アメリカ     イギリス
食事療法 和食を中心に繊維質および消化の悪いものやインスタント食品をとらなければ比較的容易である。食事指導内容が施設により格差がある。 脂っこいものが多く病気の多いのも頷けます。マクドナルドが食べれないとQ.O.L.(生活の質)が良いとは言わないらしい。 エリイミネーションダイエット(選択除去食)、低脂肪・低繊維食を中心とした食事療法の研究が進んでいる。
栄養療法 栄養剤が保険適応であり、栄養療法の普及と意味合いからしても日本が最も優れている。 鼻からチューブを挿入するという点および栄養剤の味の悪さから忍耐強く無い国民性もあり普及していない。 保険適応に制限があり急性期を栄養療法は行われていない。(安定期は自費診療。)
薬物療法 患者数が少ないことが阻害要因になりメーカーの参入も少なく遅れている。 患者数に比例し、薬剤数や開発メーカーの参入も多く、治験も進んでいる。

*より良い情報を入手するのには、栄養療法は、日本の食生活に基づいた情報、薬剤はアメリカの情報(学術論文に基づいた)を選択する必要があります。海外の医療情報の選択に関して言語という壁がある以上、何が信頼できるかの基準を考えねばなりません。当ページではMEDLINE(アメリカ国立医学図書館)収載論文およびCCFA(アメリカクローン病財団)Medscapeを参考にしております

クローン病の報告者 | 病名の由来 病気をご存じ無いから、クローン羊とかクローン技術のクローンと勘違いされますが、この病気を報告したニューヨークのマウント・サイナイ病院のブリルー・ビー・クローン(Burrill B. Crohn)先生の名前に由来しています。1932年に初めて報告されました。
Burrill B. Crohn

 潰瘍性大腸炎は大腸のみに起こる病気のため大腸全てを摘出すれば完治します。しかし手術に至るまでに、ステロイドを大量投与しなければならないために数多くの副作用に悩まされる病気であります。患者さんによっては白血球(顆粒球)除去療法という血液透析のような感じで、血中の白血球もしくは顆粒球を取り除iいて、返血する治療(保険適用)を行えばステロイドが少なく済む場合が多い。しかしながらいずれ長期間の腹痛、頻回な下痢、炎症、出血して緩解、再燃を起こす場合が多くまたそういう状態で経過するうちに癌化する可能性も高くなってくる。従って原因部位の大腸摘出のタイミングを逃すと例え手術をしたとしても「腸以外の合併症」に悩まされる場合がある。従って正しい情報の入手と手術のタイミングを判断することは重要になってきます。

 潰瘍性大腸炎の手術適応は「社会的適応」という、一般の病気では概念の無いものです。社会生活を支障なく行うために、いつ手術に踏み切るかという判断をしなければならず多くの患者を悩ますところでもあります。手術適応は一般的には「相対適応:社会適応」と「絶対適応」があり、これらは病状と相関します。「絶対適応」では緊急を要し、選択の余地は無く手術になります。「社会的適応」は、ステロイド総投与量から判断する場合もありますし、就職を期にする方もいますし、結婚、出産を期にする人、病状により人それぞれ判断基準が当人が選択しなければいけません。一時に大腸のほぼ全てを取り除くということに対し、水分を吸収する器官であるというイメージがあることで不安感が生じます。手術は一般的に2回に分けてする分割手術が主流であり1回目の手術後に人工肛門になります。この一時的な人工肛門というのも患者さんにとって未知のものであり、精神的な不安と苦痛になり、踏ん切りが着かない方が多くいらっしゃいます。私自身も、人工肛門を受け入れるまで、相当な心の葛藤があり、なかなか受け入れられませんでした。当ページのリンク先には手術を経験された方もいらっしゃいますので、生の声として参考にされる方が良いと思います。最近では、入院期間が少し延びますが、ステロイドの影響が無ければ1回の手術で完了させる場合もあります。一回で出来るか、二回かの手術が適応になるかは、患者様の状態と執刀医の判断により異なります。
下記ストーマについて参照

 潰瘍性大腸炎は、2回の手術完了後は治りますが、クローン病では例え手術をしても高率に再発を繰り返します。そういった意味でクローン病の方がかなり厳しい実情があります。

潰瘍性大腸炎での栄養療法はクローン病ほど効果はありませんが、以下の理由により栄養剤が必要な場合もあります。
1.下痢の状態が続き、腸管の亢進(過剰な動き)を押さえるという意味合い。
2.消化管に負担をかけない消化のしやすい食事(栄養)が必要な場合。
3.炎症時のエネルギー消耗を補う必要がある場合。

 病気をうまくコントロールすれば、社会生活は問題はありません。両疾患は若くから発症するケースが多く、学校生活・就労への配慮、就職のチャンス等の点で目に見えない点をどう理解していただくかが心配な点です。多くの患者さんは周りに自分の病気を告知した方が良いのか? 告知すると不利になるのか?ということが判断しがたく悩み、周りの皆様の理解に左右されてしまうという社会的に非常に難しい課題があります。見た目ではわからない内部障害という性質上、「どこまでが本人の努力不足で、どこからは病気のハンディ」として、「自分の体の自己防衛としての行動か?」を理解していただけるのか、営利企業としての民間企業に勤務する対場もありますし、私自身も仕事をしていて、判断が付かないことを多く経験をし、悩むところでもあります。残念ながら現時点での社会認識・認知では患者様が圧倒的に弱い立場であることは否定できません。

 このホームページ開設の趣旨の1つにこんな病気もあるのだと知って頂き、また友人、知人、同僚にこういった症状の方がいたらご配慮願える世の中になると幸いです。内部障害とは非常に理解しがたい病気です。具体例を挙げると、満員電車で、貧血で倒れそうになっていても、友人や会社の同僚を除き、席を替わって頂く経験がありません。がめついおばちゃんに席を替われとか、目で見て判る内部的には元気な障害者に席を替わることを要求されたことすらあります。貧血がひどいと大抵顔色が真っ青な筈です。

 血液検査の項目でヘモグロビン値というのがありますが、正常値は12-14以上ですが、我々の中で6以下の方はざらにいます。普通の人だと8位で倒れてしまうと思います。ご自身がもしそんな状態だったらどう思うでしょう。都市部、特に大阪では電車に関して言えば配慮は皆無です。ニューヨークでは結構席を譲ってもらえましたし障害者・老人には席を譲るマナー、車椅子用のパワーゲート車両など全然社会的な対応・文化/インフラが違います。

 貧血以上に切実な問題がトイレです。この病気はトイレの回数が多くなるのが特徴です。多い人で1日10回以上になります。特にトイレで待たされるのは辛いものですが、この病気がマイナーなため、多くの方が並んでいる中、順番を替えて頂くのは非常識と思われるかも知れませんが、我々には大変な問題なのです。

 また学童児のトイレの問題、給食の問題(食べられないものが多い・残すと怒られる)栄養剤をどう飲むか?など学校関係者にも啓蒙が必要であると思います。また進学においても受け入れ側の学校側がよく理解していない場合や親御さんの申し入れに対し「患者様を受け入れるのに際し施設基準が合致しない」、「どういう配慮が必要なのかマニュアルが無いから」という誤解も考えられます。

 就職に関しても、公務員採用試験でも、病名を聞いて、最終面接の段階で落ちたという話も聞いております。広く平等であるべき公務員で、病気を理由に断るというのが残念ながら現実問題としてあるのです。私たちは、難病で原因がわからないので、今すぐ自分の病気を治せません。しかし、病気があっても、十分社会の中で第一線の戦力として活躍している人は、たくさんいます。そして我々ががんばっていることが、今後就職をしていく人への道を開くと考えております。

ストーマ(人工肛門)について
健常な腸管のイラスト | mimibukuro 大腸を少し残した手術 | UC/CD/ストーマ 大腸全摘出 | UC/ CD/ストーマ
正常な腸管の状態 S状結腸に繋いだストーマ 小腸と繋いだストーマ

我々の病気の中で特に理解をされにくい障害としてストーマというのがあります。人工肛門と言う名前なら聞いたことがあるのでは無いでしょうか?ストーマとは穴のことを言います。我々の病気は、大腸や小腸が、炎症・潰瘍がひどく出血が止まらない場合や、腸管が細くなったり通過障害を起こすなど様々な理由で手術により腸管を取り除く場合があります。患者さんが、必ずしもストーマが必要というわけではありません。重症で様々な内科的治療に反応しない方や、複数回の手術をしても病状をコントロール出来ない方、上述の潰瘍性大腸炎の根治術を受ける方が一時的に、腸管を安定させる目的でストーマ造設術を行います。手術により、一時的、場合により永久に、肛門からの排便は出来なくなります。(多くの場合は一時的なストーマ造設になります。)便を排出するために、お腹に穴をあけ直接腸管を出す人工肛門(ストーマ)造設術と言います。便はパウチと呼ばれる袋に溜めます。

 大腸を残した手術の場合は、比較的、食事をしてからパウチに溜まるまで時間があるのでコントロールしやすいようです。小腸にストーマをおいた場合は、ほとんど便が固まらないため、水分が多く、トイレに行く間隔が短くなります。また食事を食べても、すぐパウチに出てしまいます。飲み会に行って食事を食べると2-3回はトイレに行かざるを得ません。「あいつトイレにしょっちゅう行くよな。」というのにはこういう原因である場合もあるのです。例え食事を取っていなくても人間は大量の消化液を生成しております。その消化液で水分がどんどんパウチに流出します。なかなか病気を知らない人には、理解出来ないので、わざわざ必要に迫られない限り病気のことを細かく伝えません。

 このストーマで、本当に困るのは、まれではありますが、パウチに貼り付ける台座の部分から、漏れるという予想外のトラブルがあります。体調の変化などによる、消化液等の分泌による水分量増加、発熱などによる剥がれやすくなる要因は、本人ではコントロールが出来ません。また、夏場は、水分流出量が、健康な人の何倍も多く、水分補給が重要になります。もし、水分補給が出来ない状態で缶詰にされると脱水症状になります。特に小腸と繋いだストーマの場合は、季節に関係なく水分流出量が多いので水分補給をして脱水を起こさないことが重要になります。小腸型のストーマ患者さんは、水分摂取を心がけていても脱水状態で電解質バランスが崩れ、点滴を受けられる方が多いですし、我慢せずに、点滴で電解質を補って貰ってください。
 
これを読んで頂いた一般の皆様へ 
 イギリスではトイレの順番を変わって下さいという「ヘルプカード」があるそうです。この病気で障害者手帳を取れる方はごく一部です。ヘルプカードが無い現状とりあえずは障害手帳がその替わりになりますが、一般の方が障害者手帳を出されたからと言って本当にトイレの順番を変わる必要があるか、今の病気の世間認知度からすれば無理でしょう。

 患者は、様々な治療法を試み少しでも、社会生活(学校・職場等)で支障なく適応するために、さんざんな葛藤の末、人工肛門造説術を受けた方が、よりQ.O.L(生活の質)を上げると、ようやく自分で受容することが出来てやっとこのストーマというのを受け入れていることをご理解頂きたいのです。また食事を制限しているのは、好き嫌いからではありません。食べると調子悪くなる病気もあるのです。不意にあなたの何気ない言葉が、患者に取っては聞き流せることも多くありますが、場合によりナイフで刺すような暴言に感じることもあるのです。

マスコミにおかれましては、正しい医療情報を元に患者の生の声を聞いていただきたいと思います。日本では患者数が両疾患を併せて約10万人と少ないですが、アメリカでは約100万人の患者数がいると言われております。
最後に、我々を取り巻く壁をあげるときりがありませんが、貧血に対する配慮とトイレの問題だけは健常者の皆様に切にお願い申し上げます。我々の取り巻く環境は結構厳しいものです。皆様の暖かいご支援をお願い致します。

 アメリカでは、クローン病財団が100万$の寄付金を受け、ブッシュ大統領 母上(息子が潰瘍性大腸炎)が出演し、TV・ラジオ等で社会認知キャンペーンが全米で2003年8月に行われたことがあります。日本でも、社会的認知が上がれば少しは、生活しやすくなるかもしれません。

追記: 略語として「炎症性腸疾患」=IBD、「クローン病」=CD、「潰瘍性大腸炎」=UC、「成分栄養剤」=ED

*1 難病情報センター 特定疾患医療受給者症交付件数より

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