原因について・症状について


1.クローン病と潰瘍性大腸炎の発病原因としていろいろと言われていますが、現在、可能性のあるものをそれぞれ3人の先生方お一つずつ順に教えて下さい?(両方)●潰瘍性大腸炎の病気になる要因として,ストレスや神経質なことは、関係ありますか?
馬場
 初めから大変難しい質問が出てまいりました。まず、その原因としては、端的に言いますと、現在のところ分からないということであります。残念ながら分かりません。それで、クローン病と潰瘍性大腸炎とでは、少し、体の反応の仕方が違うということで、原因も違うのではないかと考えられております。しかし、両疾患とも、やはり腸内の状態、つまり、食事状態、あるいはそれに伴う腸内細菌の問題。そして、腸内細菌の代謝産物。そういったものが、総合的に大きな要因の一つになっていることは否定できません。もう一つは、患者さん自身の体の状態、つまり、遺伝的な素因というものも一つあります。従って、そういう二つの大きな要因は考えられておりますが、残念ながら現在のところ、明らかではありません。

福田
 もう、まとめていただきましたので、付け加えることはございませんが、病気が起こる最初のきっかけというのは分からないです。しかし、病気に一度罹って、「良くなったなあ」と思っていて、そのあと急に悪くなったりする。増悪といいますけれど、そういう場合の原因は、いくつかあります。クローン病は、暴飲暴食が一番の原因だと思いますし、潰瘍性大腸炎の方は、どちらかというと、肉体的かつ精神的ストレスというのが、一度治まったものが悪くなる原因であるだろうと思います。それから、両方の病気では、別な感染症、特に風邪をひいたり、それで腸を悪くしたりとか、風邪薬やたくさん抗生物質を飲んだりとか、そういうようなのがきっかけで、それぞれ両方の病気が悪くなるということは分かっています。
 馬場先生から今、「遺伝的なこと」という話がございましたけど、たぶん、遺伝的なことというのは、代々遺伝する「遺伝」という意味ではなくて、生まれつき体の免疫反応のようなものが、少し起こりやすい。反応が強く起こりやすいという意味だったと思いますので、必ず遺伝するからとか、そういうような意味ではないということで、誤解するといけませんから、一応、蛇足ですが付け加えさせていただきました。

根津
外科の立場としては、あまり付け加えることはないのですが、特に潰瘍性大腸炎の場合は、一応、大腸だけを取ればそれで治ります。クローンの場合は、今のお話の食事であるとかストレス、手術をしてもそういったものでどんどん再発して、新たな病変が出来てきたり、増悪したりします。二人の先生にまとめていただきましたので、私はこれぐらいにさせていただきます。

2.高齢になるとクローン病の方は良くなると聞きますが、潰瘍性大腸炎では高齢でも症状が悪い方が多いようですがその辺はどのような理由からでしょうか?またクローン病の方は希望を持って良いのでしょうか?

馬場
 確かに、年を取ると共に、免疫機能が変化してまいります。一般に結核などでよく、「ツベルクリン反応」というのをやりますね。それは、高齢になるほどツベルクリン反応が出にくいということになります。そういった観点から見ますと、このような免疫が少し絡んでいる潰瘍性大腸炎、あるいはクローン病におきましては、そういう免疫の状態が変わると、病状が変わってくることは当然考えられます。
 例えば、クローン病の患者さんでエイズに感染するとクローン病が軽快したというデータが外国であります。つまりそれは、免疫機能の低下によって、クローン病の病勢が低下したということであります。ですから、クローン病におきましては、年を取ってくると共に、免疫機能が変化してくるために、病状が安定するということはあると思います。
 潰瘍性大腸炎に関しましては、確かに悪化するというようなことなのですが、これには一つの要因だけではなくて、先ほど申しましたようにいろんな要因が重なります。例えば、老化による動脈硬化であるとか、あるいは、血管の循環障害といったような、要因も考慮しなければならないと思います。

福田
 クローン病は年を取るとよくなって、潰瘍性大腸炎は年を取ると悪くなるという印象はあまりないですが、どちらの病気もどちらかというと、お年を取るにしたがって、若い時にはたくさん薬を飲んだり、厳しい制限が加えられたのが、だんだん緩んでいくということは、両方共通して言えるというふうに思います
 ただ、潰瘍性大腸炎やクローン病の患者さんでも中には、年を取ってもちっとも良くならないという人がいるということはございますが、全体の傾向としては、お年を取るとよくなっていくのではないかと思います。

根津
三番目に答えますとほとんど答える内容がないのですが(笑)、手術をする立場から言います。先ほど再発の話をしましたが、例えば、クローン病では高齢の方というのは、仮に手術適応があって、手術をするとその後の成績が良く、あるいは食事制限の度合いも少なく、若い人に比べると比較的再発しにくいという印象はあります。ただそれは、高齢者の方のほうが、より肛門に近い病変ができやすいので、再燃しにくいという考え方もあると聞いています。

症状について
3. 癌化について。具体的に数値をあげて10年後,20年後に,30年後に各何%か教えて下さい。(両方)


馬場
 実際には、日本での統計が出ているわけではありません。確かに、一般的には全体腸炎型で活動期の長い人、それはガンになりやすいというようなことはよく言われております。
 累積ガン化率というのがあります。10年では0−5%、20年では8−23%、30年では30−40%ということです。たぶんこれは欧米のデータであろうと思います。
 日本では、京都のガン検診センターの副所長しておられます多田先生のデータですと、これは確か全体腸炎型の10年で、1.3%から7.2%であろうと。クローン病では、大腸病変のあるクローン病の患者さんで、30歳未満に発症している人の場合は、20.9%。そして、30歳以上であると、2.2%とリスクが非常に低くなってくる。つまり、若年者で発症している場合は、このガンのリスクが非常に高くなる。しかしながら、30歳以上に発症したものでは、このリスクは低くなるということが言われております。しかし、この統計の取り方によりまして、非常に大きく変わりますので、正確なデータは日本ではまだ無いと思います。

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