1. 炎症の指標として「CRP]はクローン病ではあまりあてにならない患者さんも多いようですがどうですか?また潰瘍性大腸炎は、「CRP」を炎症の指標として判断してよろしいのですか?
福田
当てにならないことはないのですが、大まかな目安にはなります。ただ、炎症の程度がCRPではチェックできない場合があります。ですから、もう少し感度の高い検査方法を採らないといけないこともございます。いろんな検査をたくさんしなければいけませんが、だいたい9割ぐらいの患者さんでは、炎症状態というのはCRPだけでも、だいたい8割から9割位で体の炎症の状態が分かると思っていいと思います。
出口
感度の高い検査ということなのですが、具体的にどういったものが指標になりますでしょうか?私のほうではシアル酸とか、血沈というふうに聞いているのですが?白血球の値もそうかもしれませんが、教えていただければ幸いです。
福田
一般の臨床の場で調べることが可能なものではシアル酸を調べます。シアル酸はCRPよりは少し感度が高いと言われています。クローン病の場合には、潰瘍性大腸炎もそうかと思いますけど、白血球というか血液の中では、CRPが比較的正常範囲で0.3以下であっても、血小板の値がだいぶ高い人はすぐまた炎症が起こってきます。そういう、リスクファクター(危険因子)のマーカーとして考えられます。
2.
大腸内視鏡検査によって緩解期を保っていたのが悪化したり,退院予定日が先に伸びたりした人を数多く聞きます。この検査により、一時的にでも悪化する人の割合を先生のお勤めの病院(3病院)で正直に何%か教えて下さい。
福田
私のところでは統計をとっておりませんし、潰瘍性大腸炎とクローン病では違うと思いますが、クローン病でそういうことはほとんどないだろうと思います。潰瘍性大腸炎の場合には、大腸内視鏡検査を行う時の前処置、例えばひまし油や、完全に腸を洗浄するような処置のために悪くなるということでありまして、内視鏡挿入によって悪化するというよりは、せっかく下痢も治まって粘膜も落ち着いてきた状態なのに、その前処置によって、悪くなるという人は経験しております。ですから、潰瘍性大腸炎は一般的には直腸の状態を見れば、だいたいが推測できるという考え方もございますので、あまり前処置をしないで直腸の経過を見る、というやり方を主張している先生もいらっしゃいます。
馬場
私のところはだいたい入院時と退院の時に、粘膜の状態を評価しています。クローン病では、先ほどの福田先生がおっしゃられたように、内視鏡検査で悪化することはまずないと思います。潰瘍性大腸炎の場合には、内視鏡検査の為の前処置等によって悪化することが、私は10%以下の頻度で発生すると思います。
緩解期という考え方がひじょうに曖昧ですが、我々は臨床的に緩解期である、つまり腸の粘膜がそんなによくなっていないのだけれども、血便もないし、赤沈や、CRPといった炎症マーカーも落ち着いているような状態の時に内視鏡検査を行うと、一時的に悪化することがあります。しかし、1週間以内に通常は、ほぼ軽快します。
内視鏡で見ても、びらんだとか、潰瘍だとか、そういったものがない絶対緩解期にこの検査をやっても、悪化したことは一例もありません。
質問 検査に関してなんですけども、先ほどのお話ですと、内視鏡による症状の悪化はないというお話だったのですが、直腸が狭窄している患者さんには、小児用のファイバーを使うとか細経のファイバーを使うとか配慮を検討していただけるものなのでしょうか?
根津
私はクローンの肛門病変を観察する機会が多いものですから、内視鏡検査をする前にチェックし、サイズを決めています。太いほうが画像は美しいです。たくさん見る訳ではないですから、特に下の方だけ見る場合であれば、太いほうがさっと入ってしまうということです。だけど、細いのしか入らない患者さんにはもちろん細経のファイバーを使用しています。
福田
私のところでは、狭窄があってファイバースコープが入りそうにない人には検査をしません。注腸検査で見ることはありますが、ファイバースコープを痛いのを無理してやるということはしません。ただ、狭窄している場合には、拡張術などをやって、そこを少し拡げてあげるという処置として行いますけど、あまり、無理に検査のためという意味ではしない方針です。
馬場
これは、小児用のファイバースコープがあるかないか、という施設の問題と非常に関係があるのではないかと思います。
3.
炎症性腸疾患の治療に実績のある病院への転院を考えていますが、転院に伴い再度検査をし直すのは疑問に思います。(両方)
(紹介状だけでなく自分のレントゲンや検査デ−タなどを転院の際、自由に持って行く事ができないのでしょうか?)
馬場
これは、潰瘍性大腸炎や、クローン病といった病気だけではなく、いろんな病気で今、盛んに、いわゆるセカンドオピニオンということが求められていますね。つまり、ここの病院でこう言われたけど、「本当だろうか?」ということで、Aという病院からBに行かれて、診察を受ける。そういったときに、しばしば黙って来られる場合が多いんですよね。そうしますと、判定しようがないということで、私の場合は、「そこへ行ってレントゲンをもらってきてください。」とこういう事を言うのです。けれども、患者さんの方が、非常に長いこと先生に診ていただいているのに、言いづらいというような事があって、ちゅうちょしておられるのだろうと思います。しかし、少なくともレントゲンフィルム、あるいは内視鏡のフィルムといったものは、患者さん自身が医療費で払って、検査を受けておられるものですから、患者さん自身のものですので、何も病院ものではありませんし、倉庫に保管するものでもございません。ですから、率直におっしゃったほうが、私はベターだと思います。そうしますと二度の検査は必要ではないと思います。それによって、患者と医者との関係が悪くなるとは、私は少なくとも思いません。
福田
紹介していただいて、レントゲンを借りてきた時、検査を次の病院でどうするかということになりますが、その検査の時期が、だいぶ前で今の症状と合わないという場合は、もう一度検査をするということはします。それから、前の病院で一生懸命検査をやっていただいているのですが、例えば、小腸造影などでも、経口小腸透視とかで、二重造影ではなくて、病変が全部どこにあるかというのが、よく分かっていない場合は、もう一度検査をするということもします。ですが、時期がそんなに離れてなくて、そう変わってなさそうだという場合には、先ほど馬場先生もおっしゃったように、借りて持ってきていただくということで十分だろうと思います。
*上記のことを医師に気分を慨されないよう伝える方法はありますか?もしくは先生は気分を害されないでしょうか?
根津
こっちからよそへ行くときに、患者さんがどういうふうに言ったら気を悪くしないかということですか(笑)?
司会 そうです(笑)。
会場(笑)
根津
難しいですね。しかし、患者さんのカルテ公示をする時代がもう来ようかという、こういう時代ですから、「セカンドオピニオンを聞きに行きたいんですけど」と率直に言っていただいたら、ぜんぜん問題ないと思うんですけどね。
司会
その場合、患者にとりましては、例えば、遠方に出向かないと専門病院がないという所になりますと、確かに、専門病院で診ていただきたいという気持ちはあるのですが、やはり、細かいところは地元で診ていただきたいと。そういうところのケアをしていただきたいので、縁を切るようなことは言いたくない。出来れば、円満に四方八方丸く収めたいというところが本音だと思うのです。ですから、はっきりきっぱり言っていただければというかたちでおっしゃいましたけれども、先生方の性格にもよることだとは思うのですが……。
馬場
これは、本当に医者と患者との関係でして、「先生に良く診てもらっているのですが、自分も納得するような病状、あるいは、今後の予防等について、今後の病気の状態について、一度、専門の先生の意見を聞きたいから、お願いできませんでしょうか。」ということしか仕方がないのではないかなと思いますけどね。だから、あまり遠慮されることはないと思います。私自身もそういう経験があります。「どうぞ、どうぞ」と私は言っていますし、そら、医者によっては、ムッとすることは、確かにあるとは思いますね。思いますけど、それはやはり、自分自身のことですから。また、帰ってきた時に、余計な検査をされないだろうかという不安が出てくるのであれば、医者を替わられた方がいいと思います。それは仕方がないだろうと思います。
司会
ありがとうございました。今日お越しのようなドクターが増えることを祈りつつ、次の質問に移っていきたいと思います。
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