食事に関して


1.クローン病の食生活の基本は、高蛋白、高カロリー、低脂肪、低残査食と私の主治医に説明されたのですが、その内、蛋白を異物として腸に炎症を起こさないのでしょうか? (CD)

馬場
非常に難しいのですが、先ほどから、一般にクローン病では、エレンタールを初めとする成分栄養剤が非常に有効であるということで、栄養療法としての位置づけが強調されてきましたね。そこで、食事と併用していく場合、どうするかということが非常に問題になるわけなのですが、確かにこのタンパクというのは、異物として重要であることは、間違いないのです。しかし、クローン病の患者さんで、例えば、鳥や牛のタンパクに対する抗体がほんとにあるのかどうかというとあまりないのです。したがって、どれが抗原という位置づけとして、タンパクが存在しているのかということは実は明確ではないのです。
 脂肪の方はどうかというと、脂肪の方は厚生省の班会議で、エレンタールに脂肪を「13gと27gを付加して、1日の総エネルギー数は同じである。」つまり、脂肪の量だけ増やしたと。そういうスタディをやったことがあるのです。そうしますと、脂肪の多い27gを入れた方の治りが悪かったというデータが出ていますから、低脂肪というのは、一つの食事療法のねらい所だろうと思います。
 それから脂肪の量の問題と同時に、先ほど背の青い魚とおっしゃっていましたが、脂肪の質の問題になってくるのです。N−3系とN−6系、魚の脂肪はN−3系です。それから、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸といったようなものがなぜ良いかといいますと、炎症を起こすのには、難しくいえば、アラキドン酸カスケードというのがありまして、そういうのを介して、いろんな炎症性メディエターが腸粘膜に炎症を起こすわけです。それに対して、N−3系の脂肪は、そういった炎症性メディエターを抑制するという意味があるわけです。それで、脂肪の量の問題では、私は1日20g前後が一番適当かと思います。それとN−3系の、つまり魚からとった脂肪が多いものが非常に抗炎症作用として働くということだと思います。

藤原: 最初に発言させていただく前に、非常に残念なことを言わないといけないのは、要は食事療法に正しい方法はないということでございます。ですから、これからの話が、各人によっていかに食品を選択、エリミネートしていくかというふうなことになろうかと思います。
先ほどの高タンパクというふうな話でございますが、高タンパクのままで食べれば、抗原性が出るかも分かりませんが、アミノ酸という形にまで分解したものであれば、非常に少ないのです。すなわち腸にやさしい形でのタンパク質の取り方が、今皆さんがやられているエレンタールでの栄養補給、タンパク補給源だと思います。ですので、高タンパクという意味を、魚や肉や卵などで取るというふうな意味以外に、要はエレメンタルダイエットで取るという方法も含めた考え方でお願いしたいなと思います。
 
それから、低脂肪という形なのですが、20gとなりますと、例えば、1800kcalを食品で取ればそれだけで30g位になります。脂肪は食品自体に含まれておりますし、ご飯、魚、卵や豆腐にも含まれております。料理として使う場合は、非常に少ない量になりますので、その辺のところも併せて考えておく必要があるのではないかと思います。

2.ビールは腸にガスを貯めることもあって悪いとされていますが、「ウイスキー」や「ワイン」、「日本酒」」は潰瘍性大腸炎にとっては悪いですか? いいですか? 関係ないですか?つきあいもあり、大切なことなので、言葉を濁さずに教えて下さい。(UC)

馬場
私は、酒は少々であれば、別に問題ないのではないかと思います。これはあくまでも、患者さん自身のトライ&エラーでありまして、何が悪いということを決めつけることは、一切必要ではないと思います。だから、酒を飲んで悪くならなければそれでよいと思います。つまり、少なくともアルコールですと、ワインであろうとウイスキーであろうと日本酒であろうと、血液の循環をよくします。つまり、血液の循環を良くするということは、組織の修復を良くするということにもなります。また、逆に悪いファクターである活性酸素というようなものも関係する可能性があります。しかし、これは特に制限することはないと、適当であればいいのではないかというように思っております。他の先生方のご意見を…。

福田
適度といいますと、たくさん飲める人はビール3本が適度というふうに思う人もいますので(笑)、その辺は少量というふうに直した方がいいかというふうな気がします。問題はアルコールを飲みますと、胃酸分泌が亢進して胃酸が多くなります。胃に出た塩酸があまり腸の方に流れていくと、消化吸収障害ということにもなる可能性がありますので、アルコールをちょっと飲むとおなかがすくし、ゆるくなるというような人は飲まない方がいいだろうと思います。アルコールを1−2杯飲んでも、おなかの方はあまりゆるくならないということであれば、馬場先生がお話になったようにトライ&エラーでいいのではないかというふうにも思います。
 それから、クーロン病ですが、ヨーロッパでは、パン屋さんのイースト菌に対してアレルギーがあって、パンを食べると悪くなるということで、パン酵母がよくないというようなことがいわれております。それで、ビールも酵母ですので、ビール酵母がよくないかもしれませんので、そういうことから私の所では、飲むのであれば、ビールではないのにしてくださいというふうには説明しております。ただクローン病の患者さんでは、もう15年ぐらいエレンタールをやりながら、毎日水割りを2杯ぐらい晩酌で飲んでいる人もいます。その人はED(エレンタール)をきちっとやっているせいもありますが、1度も再入院しないで、15年ぐらい生活していますので、そういう意味ではその人にとってはそのくらいアルコールの量は問題ないのではないかと思います。

司会

では、実際に、お飲みになっている患者さんにお伺いしたいと思います。今日、会場に堀井さんお越しでしたら、堀井さんの方からお願いしたいと思います。

堀井
私も、お酒を飲む量は少ないのですが、少しばかりいただいています。潰瘍性大腸炎の方なのですが、病気になって4年目です。できるだけ楽しく生活したいという意味から言いまして、やはり少しくらいのお酒はあってもいいのではないかなと。毎日楽しく過ごすということの一つのアイテムやと考えながら生活していますので、お酒も少しくらいならいいかなと。その「少し」の適量が非常に難しいのですが、自分がいいという判断を一つ決めておかなければならないということだと思います。

市川
東京の方では、クローン病の方でお酒を飲まれる方が結構たくさんおられます。こちらに関東の方から、ひこばえ会の会長さんがお見えになっておられますので、東京での患者さんの現状をお話願えますでしょうか。

新山
いきなり振られてなんて申していいか分かりませんが、私もお酒は多少飲みます。私の前の会長さんなどは、お酒を飲むというよりもお酒をガバガバと、リットル単位ぐらい飲むんじゃないかなという感じです。ぼくも2年くらい前まで人口肛門にしていたのですが、そのころは、少々飲んでもすぐ袋のほうへ出てしまい酔わないので、多少というよりも勢いあまって、飲んでしまうということもありました。今は、ストマを戻したので、できるだけ控えるようにして、飲んでもコップ1−2杯位で辞めるようにしています。そんなところです。
市川
お酒を楽しんで量を少しにして飲めば、患者さんにとって、差ほど問題はないかなということでよろしいですかね。

福田

質問があるのですが、ひこばえの元会長さん、ガバガバ飲む人は最終的に今どうなってますでしょうか?

会場
  笑い

新山

その元会長もストマで、またしばらくストマにしているということです。言い方がちょっと悪かったかもしれませんが、ジョッキで何杯か飲むっていう感じなので、それで、一応ガバガバというふうに言ったのです。ぼくはあまりビール自体が好きではないので、あんまり飲まないのですが…。うちのスタッフなどでも飲む人は飲むのですが、やはり、飲んだとしても毎日飲むのではなくて、月に1回か2回ぐらいで、なおかつ、調子がいいときに飲むという形にしているみたいです。
市川 追加で言いますと、その前会長さんというのは、ほんとにビール好きでガバガバという言い方がたぶん当てはまるかなと思うのですが、入退院というのは一切なしで、ずっと緩解維持のまま過ごしております。

出口
 カモ肉を食べてもいいのでしょうか?四つ足の動物は良くなく2つ足なら構わないと聞きましたが?それは油の含有量の問題なのでしょうか?
根津
ぼくはあまり料理のことは分かっていないので、これはむしろ栄養士さんにお聞きした方がいいかと思いますが、油というのはどういう組成かということが一つですね。それから、先ほど、馬場先生が最初のところで、食べ物の話をされていましたが、例えば、タンパクではっきりと抗原と認識されるようなものは、実は科学的に確認されたものはないのです。イギリスなどで、よく除去食みたいなことをやっていますね。その中での参考からいうと、ビーフやポーク、いわゆる4つ足というようなことを表現として挙がっていたので、私はそういうふうに思っているだけなのです。だから、具体的に言えば、チキンであっても、笹身もあれば色々あるでしょう。その辺の分析を考えて、脂肪の問題と、後は、四つ足に関してはやはりタンパクが絡んでいるのではないかということです。しかし、これは世界中誰もデータをもっていないはずです。だから、食べてみて悪ければ悪いというのが一番正しいのですが、べつに冗談で言っているわけではなくて、そういう除去食の考え方でデータを出している先生方もいらっしゃいますよね。科学的な証明は後からついてくるものであろうと思います。それから、脂肪に関してはどうなのでしょうか。分かっていれば教えていただきたいのですが……。
藤原
脂肪は多分飼育された状況、餌によってかなり変わってくると思います。おそらく、飼われているカモは、特にリノール酸が多く含んでいる大豆だとかトウモロコシだとか、こういったもので飼育されているものならば、やはり、先ほど先生おっしゃいましたN−6系の脂肪酸が多い脂肪になろうかと思うのでどちらかといったら、ちょっとやばい脂肪かなと思います。ですので、脂肪の多いところは少しはずして、まずは食べてみて、3日間位食べてみて、それで良ければ良いと、私どもの病院では、そういうふうなお話をさせていただいています。

福田
ウヅラの卵にはN−3系が多いというふうに言われていますが、ウヅラは、えさが普通のニワトリとは違うのでしょうか。そうすると、ウヅラの肉はどうなのでしょうか。

藤原

例えばとれた場所だとか、飼育方法によってかなり変わってくるということで、今も概念的な話しかしてなかったのですが、当然、N−3系の多い油を使った飼育では、当然N−3系が多くなってくるというのが今までの肉の性質であるといわれているわけなんです。福田
ウヅラの卵には、多いといわれていますけど、あれはやはり、ウヅラはニワトリとえさが違うというか、そうすると、その辺は…。藤原
私は勉強不足で申し訳ないです。その辺のところは少し…。

4.間欠ED療法というのがあるそうですが、どのようなものですか?(CD)

藤原

 実は間欠ED療法というふうなものは、まだ社会的には、あるいは症例的には十分報告されてないと思うのですけども、私どもの、第3内科の下部消化管グループの先生、特に中村先生を中心に行われています。これは、ED、エレメンタル・ダイエット、いかに上手に飲んで緩解期をいかに延ばすかという方法です。例えば1週間を、完全EDを行います。その後何週間は、EDと食事を1食あるいは2食というふうな形でやって、特に間でEDを完全にやる期間を1週間必ず持つという方法でやるという方法なのです。これは、多分中村先生が、どこかで報告されると思いますが、現在私ども病院では、15例位の患者さんに行いまして、5年経過した中で、やはり60%の人が緩解を維持できているというふうな報告です。まだ、食事の中身はまだ吟味されておりませんが、そういった形で、EDをいかにきっちりと、やってその後多少フリーの食事をやっていくという方法が、間欠ED療法だというふうに聞いております。

5.食事は1日1回で少量しか食べていない為、微量元素のセレン、亜鉛等が大幅に不足しているのですが食事で不足を補う方法はありませんか? (CD)
藤原

 
先ほど福田先生がおっしゃっていただきましたように、長い間のIVH、あるいはEDをやりますと、どうしても不足している物質があります。普通に生活して普通の食事しておりますと、こういった微量元素はまず不足することがないわけなのです。中学のほうで、セレン不足で報告されています。、あるいは、亜鉛につきましては、皮膚症状、特に口の周りだとか、口内炎だとか、いうふうなもの、あるいは味覚障害が出てきたとか、結果的に亜鉛が不足したあるいはセレンが不足したというふうなことございます。それを、食品から取ろうと思えば、普通の食事を取ればいいというふうなことになるんですが、特殊な食形態の皆さんの場合は、例えば、先生先ほどおっしゃいましたように、セレンの場合は、エンテルードという経腸栄養剤ございますので、その処方を先生依頼されてはどうかと思います。それからもう一つは食品に部類するものの経腸栄養食品で、ライフロンPZというのがあります。これもセレンを追加されております。亜鉛の場合は、先生は、薬で投与されると思いますが、食品で、もしもというなれば、一番取りやすいのは、カキですね。これが案外多く含まれております。それ以外に魚にも含まれておりますし、穀類も多く含まれております。ただ、野菜・果物には少ないというふうなことでございますので、もし、意識して、少ないなというふうなことでしたら、カキでしたら、これからお鍋にしてもいいし、少し時々食べれば、不足はまぬがれるだろうと思います。
6.発病以来牛乳・乳製品は摂取しませんでした。最近、骨量が不足しがちなので牛乳・乳製品を摂りたいと考えますが、よいでしょうか?また、どのようなことに注意して摂取すればよいでしょうか?(UC)
藤原

 
例えば、カルシウム代謝を変えるような、薬剤をお飲みでないかどうかというふうなことをまず先生とご相談して欲しいなと思います。それから、もし、そういうふうなものがなければ、やはり、ビタミンD、マグネシウム、タンパク質が当然、骨を作ろうと思えば必要です。カルシウムだけでは、骨というふうなものができないわけなんで、そういったことと適度な運動も大切です。カルシウムだけ一生懸命考えておりますと、とんでもないことになりますので、総合的に考えて欲しいなと思います。ですので、牛乳をどうかということなのですけども、牛乳が好きならば、どうしても飲みたいというならば、少し練習されたらどうでしょうか。ただ、潰瘍性大腸炎の方の場合、案外、牛乳に対して、非常に抗原性が出まして、下痢が起こる人が多いように聞いておりますので、その辺のところを厳重にしてほしいなと思います。それから、どうしてもカルシウムをほしい場合は小魚ですね。ちりめんじゃこもしくはシラス干しがあります。それから、豆腐、あるいは、状態がよければ小松菜だとかいう葉っぱの野菜ですね。こういったものに、非常にカルシウムが多く含まれております。それから、もう一つは、低脂肪のヨーグルトですね。こういったものもお使いになられたらどうかと思います。それでもどうしても取れないと心配な場合は、カルシウムだけ含んでいるようなサプリメントで腸にやさしいものがあるようでございます。そういったものを探していただいてやっていただくということです。ただ、骨量はカルシウムだけではないということだけ覚えてほしいなと思います。

馬場
 
牛乳で下痢をするというのは、牛乳の中に含まれている乳糖が大きな要因になっているのですね。潰瘍性大腸炎の活動期の患者さんで、小腸のほうの乳糖分解酵素というのがあるのですが、それを測ってみますと、やはり著しく低下しております。したがって、活動期の症状が非常に激しい、あるいは、血便が出る。活動期の方においては、やはり牛乳を飲みますと、牛乳の中に含まれている乳糖が分解されずにおなかが張ったり、下痢をし、ゴロゴロする。そして、この症状が悪化する可能性があるということで、一応活動期の方に関しては、牛乳を控えめにするように指導しております。もし、飲むとすればやはり温めて飲むということも一つのコツかも分かりません。

7.最近はお腹の調子が良く、魚を中心に色々な食品に兆戦しているのですが、干した魚等は避けた方が良いですか。(みりん干し、干し魚等)(CD)
藤原
 
非常に難しい質問です。食べていいか悪いかというと先ほどの答えで、答えがないわけなのですけども、ぼくは食べてもいいと思います。ただ食べ方の問題と、もう一つ、干物自身の品質を十分確かめてほしいなと思います。焼けていますと、これは脂肪酸が酸化しまして過酸化物というものが出ていまして、これは非常に我々の体にとって毒性を発揮しますので、やめておいた方が良い。それともう一つは、それでも分からなくて、焼いて口に入れると、舌にピリッとするやつがあります。これはもう止めて下さい。過酸化物が出ております。だから、非常においしいといわれる、くさやの干物などはちょっとしんどいのと違うかなと思いますので、その辺のところを注意していただいたら良いのではないかなと思います。ただ、非常に堅いものであるとか、非常に塩辛いものであるとかいったようなものは、我々健康人でもさけた方がいいというふうに思いますので、その辺のところを注意してほしいと思います。

8. 生野菜はダメまたは避けた方が良いとされています。生野菜の栄養成分不足を補う方法を教えて下さい。サプリメント・栄養補助食品等は効果がどのぐらいあるのでしょうか。(両方)
藤原
 
生野菜から取る栄養素としますと、これは繊維ですね。ダイエタリーファイバーというふうなものと、それから、ビタミン類ですね。特に緑黄色野菜というのはカロチンというふうなものを取る目的でやるわけなのですが、それ以外にこの繊維の大事な役割としまして、ご存じのように腸内細菌層をうまく育てるのだという意味を持っております。繊維の中には一つ可溶性の繊維というもの、水に溶ける繊維というものがあります。これはペクチンと言われていまして、リンゴだとかバナナに多く含まれています。それから、ビタミンに関してですが、これはどうしても不足するならば、ビタミン剤というふうなものがあろうかと思いますが、サプリメントで出ておりますビタミンもほとんど効果は変わらないといわれておりますが、この辺のところは飲む場合は必ず先生と相談していただいた方が良いと思います。というのは、取りすぎによる心配も場合によっては、出てきますので、用量というふうなものがあろうかと思います。それから、ペクチンを取るのには、「ペクシー」というふうなペクチンを使ったドロドロとしたようなものが良いと思います。それから、ビタミン類で、カロチンというのは、卵黄なんかにも含まれておりますので、こういったところからも補給可能と思います。それ以外のビタミンCについては果物からも取れるというふうに思います。

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