妊娠・出産 

1. 結婚は可能でしょうか?
 ●病気を持っていて、本当に理解し合えるのでしょうか?●相手方両親への説明と納得はどのようにするのがベストか?(CD)
井上(CD)
出産のほうはちょっとできないので(笑)、とりあえず結婚のことをお話しさせていただきます。一応、プロファイルだけ私自身のことを、少しお話ししておいた方がいいかなと思います。私自身はクローン病と認定をされてだいたい21年経っております。そして、結婚してから16年経っておりまして、子供が中学生と小学生の男の子ばかり二人おります。ちょうど入試の中3になっていましてバタバタしておりますけども……。
 最初の発症が25歳の時でした。その時はすぐに入院になりまして、病名も分からすに調べるだけでやはり1ヶ月半ぐらいかかったかなと思います。そして、クローン病だということを聞きましてかなりショックを受けました。ひょっとすると、ずっと病院から出られないかなというぐらいの状況を自分で思っておりました。しかし、4ヶ月ぐらいの入院でとりあえず退院はできました。
 25歳ですから、結婚したりとかそういうことも仕事をしながら考えていたわけですが、その時点では結婚できる状態だとは思えませんでした。結婚していく上で、私自身が考えておかないといけない点というのが、いくつかあるかなと思っております。
 一つはやはり自分の体調ですね。これが自分でコントロールできるかどうか。体調維持です。クローンの場合は治るということはないわけですが、緩解の状態というか安定したよい状態が続けられるかどうかということです。そうすれば、自分の中で自信を持つことができますから。そういうのがないと、結婚を実現するというところまでいかないかなというのを一つ思います。
 もう一つは、これは考え方がいろいろありますので何とも言えないですが、私の場合は仕事から安定した収入を得るということをやはり考えました。結婚した相手の女性の方が逆に働かれるケースも多いですが、職の確保というそういったこともかなり考えました。
 3つ目は、これは精神的な面になるのですが、いかにその相手の人に話すか、どうやって自分の病気のことを伝えるか。ここのところですね。伝えるのか伝えないのか、ここから悩みますが……。それと、今の日本の社会では1対1の結婚ではあるのですが、お互いの家族や親族、そういった周りの方との関係というのも切り離せないところがあります。私の場合は正直なところ、親族の方まで含めて結婚する前の了解というのは、実は得ることはできませんでした。得ることができなかったというか話さなかったということです。お互いはこういう状況ですということである程度話をして、二人が納得した上でやっていけるのであれば、結婚生活は成り立つのではないかということで、「じゃ結婚しよう」と踏み切りました。
 結婚後ということになりますと、最初に発症してからかなりの入退院を繰り返し、年に4回ぐらいは入院したりしていたのですが、兵庫医科大学のほうでEDの療法を教えていただいて、それからもう10年ちょっとぐらいになると思います。体調は非常に安定しております。そういった面もあり、家内の親族の方も含めて理解が得られているということです。
 それで、ここからが私の個人的な意見なのですが、相手の方やその親族の方の理解が得られるということが大事な条件なのですが、そこが今までのことを振り返ってみると、自分自身、甘えというのと理解というのを少し混同しているケースがなかったかなという反省があります。ですから、自分自身が自立してその病気に対してある程度立ち向かっていく。もし悪くなれば、市川くんなども少しお話しされていましたが、バサッと食事を切ってエレンタールだけで一週間過ごすなど、そういうところの規律みたいなものを保って、自分をいかに律せられるかというところですね。私の場合それができたのは家内がいて子供がいて、そういう環境というのが自分自身にとっての励みになったということもあります。ですから、結婚できないかどうかということに関しては明らかにできると思います。それから、最終的には相手の方とどういった形でやっていけるかというところの合意や理解が得られるか、そこのところで成り立つのではないかと私は思っております。かなり難しい問題だと思いますが、そういうことで私の例をお話しさせていただきました。


2. 妊娠は可能でしょうか?(両方)
 ●母体・胎児に及ぼす影響は?●炎症性腸疾患の患者の妊娠前や妊娠後に気をつけることは?●患者が炎症性腸疾患の場合に出産後母乳を与えられますか?●ステロイド服用は不妊に悪影響があるのでしょうか?●大腸全摘出手術後の出産に関してどうでしょうか?

福田
可能です。ヨーロッパでは薬物療法、プレドニンやサラゾピリンなどそういう薬を使っていても、妊娠可能で赤ちゃんにあまり影響がないというような、一応そういうみんなの見解が得られています。ただ、日本人は外国人と同じかというとまた違いますし、日本人のほうが、薬に対して過敏であるというようなこともありますから、それが本当かどうかは分かりません。
 日本では、妊娠した人にあなたは薬を飲む人、あなたは飲まない人などとやってみて、どっちが副作用があるかという、そういう実験はアメリカと違うのでできないのですが、飲まない方がいいだろうというのが見解です。
 ですから、先ほど私のほうの社会的適応という患者さんも、プレドニンとサラゾピリンがどうしてもやめられない。つまり、やめてくると血便が出るという状況だったので、思いきって手術して「赤ちゃんを産みましょう」「結婚しましょう」ということで、若い女の子でしたがそういうことをしました。本人が頭の中に薬を使ったらまずいなという気持ちがあれば、大丈夫だと言われても結果はあまりよくないと思いますので、薬は飲まない方がいいと思います。
 薬を飲んでなければ妊娠・出産は可能であろうと思います。クローン病の場合の極端な例ですが、私どものところに二人患者さんがいますが、妊娠中に悪くなって栄養剤だけでは間に合わないで、IVHをしたまま赤ちゃんをお産みになったという患者さんがあります。二人ともお子さんも元気に育っておりますし、その後、特別問題なくうまくいっていますので、まず問題ないかと思います。
馬場 あまり付け加えることはないのですが、実は関西地区で、特に潰瘍性大腸炎の患者さんで妊娠した例がどれぐらいあるかということを調べたものがあります。今までに151例の回答がありました。活動期で妊娠している人がその中の89例。そして、妊娠中に潰瘍性大腸炎が活動期となった方が46例。そして、妊娠中に潰瘍性大腸炎が発症したというのが16例ということであります。かなりの方が妊娠し、そして、分娩しておられるということであります。
 各施設で見てみますと、100例以上もの潰瘍性大腸炎の患者さんを診ておられる所では、緩解期に妊娠したり、あるいは活動期で妊娠する、そういった症例をすべて経験しておられますので、多くの患者さんが集まっておられる所では。先生方も妊娠に対して非常に経験があるということであります。特に妊娠されたときに、奇形のことがいつも問題になるのですが、これは日本全体の炎症性腸管障害調査研究班、厚生省の班会議でも以前から集計されたものがありますが、それによって薬剤等で明らかに奇形等の頻度が一般の分娩数よりも増えているというデータはないのであります。


3.サラゾピリン服用中に精子が減ると聞きましたが、「精子の質(運動能力)はサラゾピリン等によって落ちないのでしょうか?
 ●不妊についてペンタサとサラゾピリンの違いを教えて下さい。 (両方)

福田
これは飲んだ人全員に精子の異常が起こって、それで不妊になるということではありません。特にサラゾピリンに対してのアレルギーというか、特異体質ではないですかね。そういうのがある人では男性不妊が現れるということであります。サラゾピリンをお飲みになったまま妊娠することが可能であったということはもちろんありますので、全部が全部それで問題になったというわけではありません。
 では、こうなったものがどう戻るかというと、薬物の影響ですから、精子が出来上がってから成長して分裂してくるまでが早いので、3ヶ月ぐらいあれば後の影響はないだろうというふうに考えます。その場合には機能的に全部戻ります。ある潰瘍性大腸炎の患者さんで調べてもらったら、やはり異常があって、子供ができないのはそれが原因だということが分かりまして、3ヶ月から4ヶ月の間、サラゾピリンをやめて少量のプレドニンに替えて治療しましたら赤ちゃんができたという報告はございます。ですから、機能的にはたぶんもどってくるだろうと思います。
 日本では、お薬を使った前と後で、精子を調べて顕微鏡で見たり、数えたり、そういうのは何となく風土的にできないので、こういうのはアメリカしかデータがないのです。日本では分かりませんが経験的には多分問題がないのではないかと思います。
 それから、小腸などによく効くというペンタサというのがあります。これはサラゾピリンに比べて精子に対する影響は若干少ないといわれていますので、どうしても薬をやめられない場合には替えてみるとかそういうようなことも必要かとは思います。


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