消化管内の微生物及び遺伝子解析

人間の消化管内に生息する微生物の遺伝子の全容が100人余りの科学者らによる研究で解明され、英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。潰瘍や炎症性腸疾患(IBD)などの疾患治療に利用できる可能性があるという。

調査方法
 研究は中国科学院北京基因組研究所(Beijing Genomics Institute、BGI)の主導で2年以上をかけて行われた。 デンマークとスペインで、健康体、肥満体、炎症性腸患者などさまざまな成人124人を対象に、腸内検査を実施。最新のDNAの塩基配列決定法を用いて、ヒトゲノムに換算して200人分に相当する遺伝子データを収集。

結果
単細胞生物約1,000種の遺伝子約330万個を発見した。食事や住環境の違いにかかわらず、大半の人がその体内の微生物叢について、かなりの最小公分母を共有していた。 研究では、各人につき少なくとも160種の微生物が生息していることが分かった。これは遺伝子別に換算して50万個以上に相当し、うち約40%が被験者の約半数に共通していた。また、体内に生息する微生物の個体数は、人間の細胞の約10倍に上り、数兆個が口内、皮膚、肺、そして特に腸内に集中して生息していた。

研究の意義
 微生物は健康には欠かせない存在で、消化の悪い食べ物を分解し、免疫システムを活性化させ、ビタミンを生成する。しかし、最近の研究では、肥満や心疾患、IBDなどの腸内疾患に影響を及ぼすことも指摘されている。フランス国立農学研究所のスタニスラブデュスコ・エールリッヒ(Stanislav-Dusko Ehrlich)博士によると、どの主要微生物が健康な腸内に生息するのかが分かれば、潰瘍や炎症性腸疾患、IBDの1種で痛みを伴うクローン病などのより正確な診断や予後診断ができるようになる可能性がある。「将来的には、健康のために微生物叢を「最適化」することもできるだろう。食事による病気予防や、個人の遺伝子や微生物の状態に合わせた治療もできるようになるのではないか」とのコメント。

A human gut microbial gene catalogue established by metagenomic sequencing. Qin J, Li R, et.al. Nature. 2010 Mar 4;464(7285):59-65.   Full text

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