「クローン病と潰瘍性大腸炎における食事と栄養について」
社会保険中央総合病院 管理栄養士 斉藤恵子先生

炎症性腸疾患患者に不足しやすい栄養素

 この他不足しやすい栄養素ということですが、ビタミンAやビタミンD、これは脂溶性といって油に溶かし込んで吸収するビタミンです。ということで、油を制限することによって、脂溶性のビタミンの吸収が悪くなってしまうということが言われています。

 ビタミンAは、粘膜、目の視力にも関係してきますし、喉の粘膜、皮膚等、そういった健康を保つ働きがあります。これが不足すると、皮膚がカサカサしてしまうとか、風邪をひきやすくなる等がありますのでビタミンAは摂っていただいた方が良いと思います。

 ベータカロチンはビタミンAが2つつながった形をしていて、必要に応じてビタミンAに変換されます。これは人参、カボチャ、ほうれん草等緑黄色野菜に多く含まれています。ベータカロチンはビタミンAと異なり毒性が少ないですから、サプリメントではベータカロチンの形で摂っていただくのがみなさんには良いかもしれません。レバーは、ビタミンA、鉄分、亜鉛もたくさん含んでますので、鶏のレバーがお勧めです。あと、豚についてですが、兵庫医大で言われていますのが、豚のアミラーゼという酵素があるのですが、これに対して抗原抗体反応を示すクローン病の患者さんが、4割ぐらいいらっしゃるということです。つまり4割の患者さんが豚を食べると調子が悪くなると言われていますので、みなさん豚は自分に合うか合わないか試していただきたいた方が良いです。即出るかどうかは、なんとも言えないのですが。食事療法で豚の赤身を摂っているのにうまくいかないという患者さんはちょっと疑ってみたら良いと思います。

 あとはソーセージ、これも豚肉で作ってありますので、その辺もちょっと注意してください。ですから、鶏のレバーが脂肪のバランスも一番良いですから、これがお勧めです。なるべくブロイラーや輸入ではないもの買ってきていただいて、出元がしっかりわかっている鶏のレバーを買ってきていただくのが一番良いと思います。

 ビタミンDは、カルシウムの吸収を促進させるビタミンです。 これは日光浴すれば、皮膚の下である程度合成されます。天気の良いときには、ちょっと日光浴して、運動していただくと、カルシウムの吸収が良くなります。食品の中では、魚、卵、キノコ類等に多く含まれています。 ビタミンB12は、回腸の末端部で吸収されるビタミンです。

 クローン病の患者さんで回腸末端部をとってしまっている患者さんが多いですから、やはりビタミンB12の吸収が良くないです。
 ビタミンB12と葉酸が不足してくると巨赤芽球性貧血というのになりやすくなります。ですからビタミンB12というのも一つポイントになります。
 これはレバーとか、貝、カキなどにたくさん含まれています。この他シャケやイワシというものにもたくさん含まれています。
 大腸型でサラゾピリンを飲んでいらっしゃる患者さんもいらっしゃいますが、そういう患者さんでは、葉酸というビタミンが不足します。これも不足すると貧血につながってきます。葉酸はほうれん草、レバー、バナナや小麦胚芽、そういったものに含まれています。
 カルシウムは、乳糖不耐症の患者さんで、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロして、どしても乳製品が摂れないという方では、不足したりします。
 牛乳は乳糖の含有量が多いのですが、低脂肪牛乳だったらどうかと思われると思いますが、低脂肪牛乳は牛乳よりも脂肪の含有量は少ないのですが、乳糖は普通の牛乳よりは多くなります。ですから乳糖不耐症の患者さんは、牛乳からローファット牛乳に替えても全然だめっていうことになります。

 乳糖不耐症の患者さんでは、ヨーグルトが良いと思います。これは乳酸菌がある程度乳糖を分解してくれますので、こちらの方がよろしいと思います。あとアカディ牛乳というのがあります。これは雪印から出ているのですが、乳糖の含有量がすごく少ないです。乳糖不耐症と言われる患者さんではアカディ牛乳、もしくはヨーグルトなどの、発酵されたものの方が良いということです。

 ヨーグルトも、乳糖が分解されるといっても少し残っていますから、乳製品は一切だめという患者さんは、卵殻カルシウムという、卵の殻から取ったカルシウムをお勧めしています。

 少量ずつ出血がある場合では鉄が不足してきます。
 鉄が含まれているのは、レバー、赤身の肉類、魚の血合いの部分、卵などです。動物性の方が、植物性のものに比べて断然吸収が良いです。レバーの中でも、豚はあまり良くないと言いましたが、豚、鶏、牛の順番に鉄分が多く含まれています。牛は鉄の含有量がぐっと減ります。そういった意味で鶏は、含有量も多いですし、比較的安全なのではないかなと思います。

 亜鉛は、タンパク質を作るのに必ず必要です。ですから亜鉛が不足してくると、傷の治りが悪い、潰瘍の治りが悪い等といったことになります。ですから亜鉛は十分取っていただいた方が良いと思います。 ダントツに多く含まれているのは牡蠣(カキ)です。それから大豆製品。豆腐、納豆、お味噌、高野豆腐などです。それからイワシとかレバーにも含まれています。

 セレンは成分栄養剤に特に不足している栄養素です。セレンが不足してくると、どういうことが起きるかっていいますと、爪が白くなってきたり、下半身の力が入らなくなったり、筋肉痛になりやすかったりしますし、不整脈等の心筋症になりやすいです。 このセレンに今ちょっと注目しています。通常の日本人ではまず不足することがない栄養素と言われてますが、成分栄養剤、IVH(中心静脈栄養)に加える微量元素の中にはほとんど入ってません。ということで、禁食が長い人、それから成分栄養剤のみを長期で施行されている方が特に、気をつけていただきたいです。 セレンはお魚にとてもたくさん含まれています。そういった意味でお魚を摂っていただくと良いと思います。

 禁食中の患者さんでは、少しずつでも摂れるように、煮干しの粉末をお味噌汁に入れたり、桜エビ、干しエビみたいなものに多く含まれますから、そういったものをふりかけみたいにして、ご飯にかけて食べたりとか、そういうふうに少しでも摂っていただくと良いと思います。

炎症性腸疾患に不足しやすい栄養素とそれらを多く含む食品

 全体の摂取不良や喪失により、ミネラルや脂溶性ビタミン(特にA,D)が欠乏することがあります。野菜類、いも類などはできるだけ消化が良いように調理して十分に摂取しましょう。

【ビタミンA】所要量 男性2,000IU、女性1,800IU/許容上限摂取量 5,000IU
 ヤツメウナギ、レバー、人参、ほうれん草などの緑黄色野菜、肝油など

【ビタミンD】所要量 100IU/許容上限摂取量 2,000IU
 魚類、卵、きのこ類など。日光浴をすることにより皮膚の下で合成される。

【ビタミンB12】所要量 2.4μg/許容上限摂取量 ∞g
 レバー、貝類、鮭、いわしなど

【カルシウム】所要量 600mg/許容上限摂取量 2,500mg
 脂肪・乳糖含有量の少ない乳製品、小魚、ほうれん草、卵殻など

【鉄】所要量 男性10mg、女性12mg/許容上限摂取量 40mg
 レバー、赤身の肉類、魚の血合いの部分、卵など

【亜鉛】所要量 8〜12mg/許容上限摂取量 30mg
 牡蠣(カキ)、大豆製品、鰯(いわし)、レバーなど

【セレン】所要量 45〜60μg/許容上限摂取量  μg
 成分栄養剤での含有量が非常に少ない。 魚介類、卵など


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