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仕事でちょっとアトランタ                      元 兵庫CD倶楽部 井上晴行

 今年の4月初め、急にアトランタに出張が決まった。本当に突然で、出発まで1週間も無い。日程は10日間だ。
もう少し余裕があれば、エレンタールを宅配か何かで事前に現地のホテルまで送れるのだが、仕方が無いので今回は10日間のエレンタールをバッグに詰めていくことにする。1個80g、5パック/日を12日間(含予備2日分)で約5kg、ボーリングの玉一個分ぐらいの重さだ。トランクに入れても相当嵩張る。

 昨年のイギリス出張時の持ち物リストを引っ張り出してきて、見直す事にする。何かの参考になればと思い、今回持参したものをリストとして最後に載せておいた。
直行便13時間のフライトなので、機内バッグにも500ccの経口用のエレンタールを入れる事にした。エレンタール、パック、チューブやペンタサなどの医薬品については余分に入れ、さらに、海外では預けた荷物が紛失したりする事は結構起こる事なので、可能な物は機内バッグと預けるバッグの二つに分けて荷造りをした。現地で食べても良さそうなものが手に入らないと困るので、ティーバッグ、せんべい、レトルトのおかゆなどの食品も持って行く事にする。
後は、旅行会社に現地のホテルの予約を入れる。この時に大事な事は、和食のレストランがあるホテルを選ぶ事と、部屋に備え付けられている設備の確認である。
和食のレストランは、万が一体調が悪くなったときに役に立つし、毎日毎日現地の洋食は食べられないからである。設備面は、ホテルの部屋に湯沸かしポットがあるかどうか、部屋の水道水が飲食用に安全かどうかなど事前チェックしておくと安心できる。幸い、今回取れたホテルは、和食のレストランがあるし、設備についても、ポットは無かったが、コーヒーメーカーがあるとの事で、それを代用する事とした。

 ED用のポンプ(私の場合フレンタを使用)は、本体だけを持っていき、電源はアルカリ乾電池を使用した。これまでの経験上、アルカリ乾電池1セット(4本)で約3〜4日間持つ事がわかっていたので、とりあえず16本持参することにした。
さて、出かける前に余裕があれば、担当医師に、万が一のコンタクト先(現地で診てもらえる病院)を聞いていくのがいいと思う。まあ、クローン病は、欧米では日本よりポピュラーなのでそれほど気を使う必要は無いかもしれないが、念のため。万が一、クローン病で医者に掛かった時に使えるかどうかは別として、他のトラブルなども考慮して、海外旅行傷害保険にも入っておいた。

 さて、いよいよフライトであるが、13時間の間、機内食だけでしのいでも良いし、安心が得られるのであれば、機内でお湯を分けてもらい、フレーバを加えて経口用にエレンタールを作って飲むのも良いと思う。大事な事は、いかに自分がリラックスしてストレスを溜めずに過ごせるかだと思う。私の場合は、お湯を分けてもらいエレンタールを作り機内で経口した。
機内でどんな物を食べたか、現地でどんな物を食べたかなども参考にと思い、表にしたので参考にしてもらえればと思う。
到着後の注意事項としては、当たり前の事だが、まず休養を取る事だ。自分では気づいていない事が多いが、時差や環境の変化などで、思った以上に身体は緊張しているものだ。時差も気になるが、「眠ければ取りあえず寝ちゃおう」ぐらいの気持ちでいいと思う。
ホテルにチェックインしたら、まず、部屋の水道の水が飲めるかどうかを確認して置こう。部屋の中に親切にガイドが書かれている事もあるが、今回は無かったので、フロントに電話して確認した。

I would like to drink tap water. Is it safety ?
ぐらいのいいかげんな英語で十分通じる。
幸いアトランタでは、水道水が飲める事がわかった。一安心。

 次はと言うと、スーパーマーケット捜しだ。ホテルのインフォーメーションで場所を確認して出かける。今回のように水道水が飲めればそれほど問題ではないが、水道水が飲めない所では水の買い出しの目的でスーパーに行く。最悪、ホテルの部屋に備え付けられた冷蔵庫内の、もしくは、ルームサービスのミネラルウォーターを使う事が出来るが、かなり割高でもったいない。行ってみると、案外クローン病患者でもそれなりにちょっと食べれそうな物を見つけたりする。今回は、あっさりした菓子パンを見つけ、いくつか買い込む。
さて、初日の夜だ。事前に確認しておいたコーヒーメーカーでお湯を沸かし、少し冷ましてから耐熱性計量カップに入れエレンタールをスプーンで溶く。そしてEDパックに入れる。部屋に備え付けの椅子の背もたれのところに洗濯物用のS字の引っ掛け用具を掛け、それにEDパックを引っかける。このS字の引っ掛けは、ベッドの周辺に引っかけるところが無い場合など、ちょっとした所に簡単に掛けられるので重宝している。これをベッドの枕元の横に運んで、アルカリ電池を入れたポンプに繋ぐ。ところが、ホテルによっては、まれにS字の引っ掛けが使えないような椅子もあるので、その時のために紐を持っていくことにしている。EDチューブは今回10本持ってきているので、毎日使い捨てとする。常々家では、1本/週ぐらいで使い、こういう時の予備として貯えておく。
いつもと変わらず夜中に1度トイレに起きる。早く夜が明け、家に居る時と同じようにパックを洗い、吊るしておく。

 さあ、今日からいよいよ仕事である。何が問題かと言えばやはり一番は食事。訪問先の相手側が、ランチの準備をしてくれていたり、夜は夜で食事に招待されたりと、なかなか家に居るときのように自由にはならない。食事内容もとてもクローン病患者向けとは言えない物がどんどん出てくる。適当に食べられそうなものを選んで口に運ぶが、量も日本の倍ぐらいはあるし、かなり残す。最初の時点で、さりげなく、食事制限を受けていて残す事がある事を相手に伝えておいたので、相手もそれほど気にはしていない。個人的には、こちらの意思表示が明確なほど、うまく行くのではないかと思う。二度ほど招待をお断りしたり、一度は中座したりもした。食事内容の表に摂取したエレンタールの量も、書き添えておいたので参考になればと思う。
10日間の内、一度週末があったので、郊外の公園や市内観光で気分転換する。アトランタは非常にクリーンな街で、気持ちが良かった。気候もほぼ日本と同じで、出張時の4月は大変さわやかな毎日を過ごせた。

 この調子で最後までいけると思っていたのだが、こちらに帰る最終日に調子が悪くなってしまう。前日の夕方頃から背中と下腹部に痛みがはしりだす。仕事の目的が果たせ、自分では気を引き締めていたつもりではいたが、緊張感が緩んだ事が一つの原因かもしれない。また、食事の状況が日本ほど良くなかった事が原因かもしれない。原因はともかく、すぐに絶食、EDのみに切替える。何とか帰りのフライトまでには痛みが引いて欲しいと願いながら、プレドニン10mg服用しベッドでうずくまる。幸い3時間ほどで痛みが徐々に引き始め、いつのまにか寝入ってしまう。
翌朝目が覚めた時には、背中と右下腹部に少しけだるい感じはあったが、痛みは引いてしまっていた。あまり酷くはならずとりあえず一安心。飛行機に乗れそうだ。同僚が心配してくれていたので、大丈夫と電話で連絡を入れる。

 朝、再度プレドニン10mgを服用し、ホテルで作ったフレーバー入りのエレンタール500ccをチビチビ飲みながら時間を過ごし、午前11時30分予定通りの帰りの便に搭乗。機中で痛みが出ないかと、気にしながらの日本までの13時間はとても長く、関空に降り立った時は、さすがにほっとする。一休みした後、帰宅の途に。
今回は、少しひやっとする状況にもなったが、何とか無事に海外出張を終える。

(追記)
最近、私自身は、自分の病状と相談しながら、少しずつ自分自身の限界を広げていければと努力しています。その事が、自分自身のQOL(クオリティオブライフ)を引き上げる事につながり、病気の状況を緩解状態に保つ一助にもなっていると強く信じているからです。「それぞれの患者さんがそれぞれの病状と相談しながら、少しでも良い生活が過ごせれば」なんて最近考えています。お互いに、頑張りましょう。

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