体験談や医療情報以外のプライベートがテーマ
アメリカ留学でブデソナイド!
2004.2.25記 ジオ特派員
これはアメリカ留学中に保険適用で日本より進んだ緩解維持のための治療が可能であるという実体験記です。
クローン病の患者さんの中には、一般の人と同じような生活がしたい、もしくはできると信じている人がたくさんいると思います。そんな人たちの助けになれば幸いです。
(注)緩解期の人を想定しています。
私の病歴
私は高校生の頃が最初でした。いわゆる受験社会の真っ只中、いわゆる進学校に進み、ハードなスケジュールの中、腹部をさすような痛みが続いてました。けれども当初は十二指腸潰瘍ではないかと疑われていただけでした。また、行った先が田舎の総合病院という、当時としては一番クローン病が発見されにくそうな場所だったこともあります。痛みを抱えたまま高校一年を留年。長期休養のかいがあって次の年は無事に進級しましたが、適切な治療を行っていないために、当然痛みが完全に治まるわけもなく、、、結局、二年生の夏に高校を中退、このときはじめてクローン病だとはっきりしました。注腸透視では横行結腸がまったく元気が無いほど垂れ下がっており、こりゃだめだなぁと衝撃を受けたのを覚えています。それでも潰瘍性大腸炎かクローン病かはその後の内視鏡検査までわからず、それまでは点滴+エンシュアリキッドのみという生活。最低って思いました。エンシュアだけでも、1ヶ月もすると痛みも収まり、元気な身体ってこうなんだという再発見。とはいえ食事を開始してみるものの腸が限りなく細くなっていたのかろくに食事を受け付けず、そのまま半年以上、エンシュアのみでの生活が続きました。その時、担当医がクローンの専門家であったらエレンタールを飲まされていたかもしれませんが、幸いというべきでしょうか?(笑)
その後、エンシュア依存ではあるものの、痛みを感じず動き回れる体を得たことにより、たったの1年で、車の免許からはじまり、大検、そして大学入学まで一気に進みました。けれども教習所に行ったり、予備校に行ったりする中で食べるという欲求が増して行き・・・
結局は体調がすぐれないまま、ほぼ通常食を摂り続けることを自動的に選択するようになりました。つまり治療的なものはペンタサ6錠のみ。そのため大学のころは毎年のように入院を1ヶ月ずつくらい経験しています。絶食すればすぐに回復していたので重症ではなかったのかもしれません。それにしてもステロイドを使わなくてよかったというのも幸いでした。
こんな生活をつづけていくうちに腸はひどいことになっていきます。手術こそ経験が無いものの、狭窄、癒着、瘻孔、果てには小腸と大腸が変なところでつながってしまってる状態になり、認可されたばかりで期待感のあった抗TNF-αも主治医の判断で却下。いきなり使うと狭窄がさらに激しくなってしまうだろうということでした。内視鏡は当然奥まで入らない、X線透視とか見ても、よくなんでも食べられるなぁ誰もが疑うという不思議な状況になっていました。無理やリどうにか食べ物の通り道をつくってるんでしょうね。けれども、開腹手術でもしたら半分以上はとらなきゃいけないと脅されるような状況だったのも事実です。まぁ当然ですが体調は完璧と言えるほどではなく、そしていつまでも中途半端な生活が続くので、やはり普通の人と同じような生活がしたいと思いは日に日に高まっていきました。そして、比較的体調が落ち着いた頃、気紛れでアメリカへの語学留学を決意します。環境が変われば体調も変わるんじゃないかなという淡い期待もありました。そう、当初はアメリカで治療を受けるつもりは全く無かったのです。
2003年3月末、アメリカ、東海岸へ留学。
食べるものは曲がりなりにもほとんどOKだったので、それほど心配はありませんでしたが、下痢が続いたのは日本にいた頃と変わりませんでした。だから携帯用ウォッシュレットを持っていったのは大正解でしたね。主食じゃないんですが、よく食べていたのはチーズステーキというサブウェイみたいなパンに牛肉の薄切りとたまねぎを炒めたものをチーズと一緒に挟んだもの。牛丼みたいに脂身が多くないのでけっこう大丈夫なようでした。日本食っぽいものといえば、近所のスーパーでもパック寿司なんてのは当たり前のように置いてあったりしました。飲み物は甘ったるいものが多く口に合わなかったので、100%オレンジジュースのパルプフリーという繊維が入っていないものをよく飲んでました。あとは紅茶や緑茶。コーラはたまに、スプライトなんかも良く飲んでました。あとアメリカではDecafというカフェインの入ってないコーヒーがどこでも売ってます。まぁ少し郊外に日本食の店や食料品店もいくつかあるので必要に応じて買いに行ってた程度です。また病気にうるさい親元を離れたために精神的な開放感も重なり当初はそれなりに元気に学校に通っていました。
しかし8月の終わり・・・・
初診
実は夏の1ヶ月間だけ、南部にあるサマースクールみたいなところで寮生活を行っていました。それまではアパート的なところに住んで自炊もできたのですが、そこでの食事は毎日量が多く、そんなの周りと同じように食べてたのがたたったんでしょうか。急な下血。初めての経験だったので驚きと、正直とまどい、仕方なく病院に行くことになりました。また、相当痛み慣れしていたので、下痢が続いていましたが腹痛を全く感じない体質になっていたというのもあると思います。
病院は近くの緊急で見てくれる総合病院でした。そしてアメリカの場合は救急医療(ER)は無料となっています。一応座っていられる状態だったこともありましたが、やっぱり30分ほどは待たされましたね。その後、血液検査や血圧といったまぁ一般的な検査と症状を聞かれました。けどやっぱり日本での血液検査の結果や病状を英語で説明したものを持っていっていたので、それはかなり役に立ちました。しかし採血の結果がそれほど悪くなかったため、下血が止まっていないにもかかわらず、またその時、専門医がいないこともあり、帰って明日また来てくださいとのこと。まぁ貧血になっていないのであれば病院にやれることが少ないのはわかっているので一旦帰宅。とはいえ検査結果が日本にいたころと同じだったということはCRPが3〜4ということなので、多少は見た目、元気になっていたとはいえ、やはり病気自体が良くなってたわけでもないのは確かなようでした。
そして翌日朝からの診療。運良く良い医師にあたり、じっくり話を聞いてくれ、いろいろと何を食べればよいかなども説明してくれました。痔ろうの症状も以前あったのでそのあたりも見てくれて。まぁ、当然のように抗TNFα製剤の点滴も継続して受けることを薦められましたが、日本の主治医がその使用を保留していたこともあり、やめておきました。もちろんアメリカでは3回までなんて制限はありません。希望すれば何度でも使えると思います。
#余談ですが、身長や体重はグラム・メートル法ではなく、ポンド・フィートで言えるようになっておいたほうがよいです。また体温も摂氏ではなく、華氏なので小数点以下の細かいところなんてわかりません。しかも舌下検温。いろいろ難しいです。。
そこで処方されたのがブデソナイドです。EntccortTM EC(商品名)カプセル3mgの試供品をくれました。これは、完全に院外処方になっているので薬局で買うまでのつなぎという形ですね。出口さんも紹介されているようにブデソナイドはいわゆるアンチドラッグ型ステロイドで、全く副作用を感じることも無く、しっかり炎症を抑えてくれるという薬です。毎朝3カプセル、9mg飲みます。ただグレープフルーツが禁忌となっています。
さて、下血自体は突発性のものだったようで2,3日で収まり、またブデソナイドの効果は1週間ほどで現れました。大げさかもしれませんが常にトイレを気にしてなくてはならなかった体調が、一気にトイレを気にせず街を歩き回れるほどにまでなりました、とでもいえばわかるでしょうか?とはいえ炎症がおさまっただけであり、多少はましになったものの下痢が治ったわけではありませんでした。その後もしばらくは食事を控えたほうが良い名とは思っていましたが、また、エンシュアリキッドやエレンタールのような栄養剤は普通の薬局では置いていません。医師に進められたEnsure(R)という名前の栄養剤も大味で甘ったるく・・・そもそもたんぱく質が分解されておらず、脂肪分が比較的多いということであまり薦められませんね。もし、栄養剤が必要であれば、別途、出口さんお奨めのSubdue(R)などクローン病用を明記してあるものを探していたかもしれません。
けど実際は、すぐにジャンクフードにもどってしまいました。。。やっぱダメですねぇ。。。
保険・費用
気になる費用ですが、2日目の通常の診察では当然費用もかかります。既往症だったため加入していた海外旅行保険でカバーされるか不安もありましたが・・・こんな状態で金は惜しめませんよね。とはいえ、さすがに大掛かりな検査は断りました。
結果、初診+ブデソナイドの処方箋(3回分のリフィル付)でUS$210、薬そのものは1ヶ月US$230ほどでした。日本の海外旅行保険では既往症扱いになり全く役に立ちませんでした。クレジットカードで支払えるのは良いですね。帰国後の話となりますが、このとき支払った初診料の$200ほどのうち6,000円ほどは日本の健康保険で帰ってきました。薬は当然のことながら保険適応外です。
その後、東海岸に戻り、学校の提供するごく一般的な保険に加入しました。実はこの保険、母体はAetnaという会社なんですが、クローン病をカバーしてくれるんです。一応、クローン病をカバーしてくれなければ学校の保険に入る意味が全く無く、WEBで調べてもよくわからなかったため、担当者にきちんとカバーするか何度も確認してもらいました。その話によると最近OKになったようなので、これだけはブッシュ大統領のお陰とも言えるかもしれません。通常のブルークロスなどの保険に入ることも可能だったかもしれませんが、手続きがややこしく、短期滞在の学生であることを考えると
最良の選択だったと思います。
保険料は3ヶ月でUS$255と、日本の海外旅行保険とほぼ同水準です。盗難保険のことさえのぞけば、こちらで医師にかかることを考えた場合絶対お得。処方薬を薬局で買う場合は$20だけ支払えばよいことになっています。また診察や検査などは2割負担。日本の医療保険と同じですね。また2割負担といっても年間最大$600が患者負担の上限となっているのも長期で契約した場合は魅力的です。ただ薬は一度に1ヶ月分のリフィルしかもらえず、それも25日以上の間隔を空けなければならないので注意が必要でした。
#帰国前無理を通そうとしたけれども失敗。。。。。
その後の診療
東海岸の学校に戻ったあと、処方箋が足りなくなってきたので知り合いの主治医がやっている小さな診療所にいきました。なんでも、1ヶ月も前から予約しておかないとダメだそうです。いわゆる地元住民のプライマリドクターっていう感じで、定期的に診てもらいに来ている患者は知り合い同士といった場合が多かったです。そのためかひとりひとりに対してすごく時間を取ります。5分診療なんてことはなく、最低でも15分ほどはかけているようでした。おかげで2時間近く待たされましたが・・・また、小さい診療所だから自由が利くのでしょう。留学生ということもあり、いわゆる友達価格ですね。一応保険番号などは提示したにもかかわらず1セントも払う必要ありませんでした。そして日付を調節した2枚の処方箋・・・それぞれ5回分と10回分のリフィルとなっています。その後、この処方箋で帰国時に保険適用で買えるだけ買おうとしましたが、薬局の人は厳しいんです。。。先に書いたように無理でした。しかしこの処方箋は保険こそ効きませんが後にオンラインで輸入する時に役立ちます。
その後、保険会社から診察料US$200ほどの80%が医師へ支払われましたという通知がきていました。このような患者の金銭負担の軽減と医師のボランティア精神の両方が生かされる形はすばらしいと感じられました。
日本に帰ってきて
さて、胃腸がぐちゃぐちゃになっているため、ずっと下痢がつづくのはどうしようもありませんが、ごくたまに固形の便が出たりするとなんとなく落ち着きます。体調そのものもブデソナイドを継続しているため、もちろんペンタサ12錠も併用ですが、それなりにハードなスケジュールもこなすことが可能です。先日、日本に帰ってきて初めての採血の結果は、なんとCRPがたったの0.3。ここ数年ずっとCRPの値は3前後で推移していたので主治医も正直驚いてました。
おわりに
ブデソナイドについてですが、まぁ日本でさっさと認可してくれればよいのですが、まだ2年くらいはかかるのでしょうね。それまでは個人輸入という形をとらざるを得ません。また悪化は抑えてくれてますが、ぐちゃぐちゃになった腸を治してくれるわけでもありません。さらなる医療技術の進歩を待たざるを得ないのが実情です。
ところで、クローン病の患者も多く、医療も進んでいるアメリカですが、日本と違い貧困問題もかかえています。そういった低所得者層や福祉依存の世帯に属する人たちは医療保険に加入する経済的余裕は全くありません。そのような人たちが薬を必要とする時に利用するのがカナダの薬局だそうです。薬の種類にもよりますが、カナダでの薬価はアメリカより約2割ほど安いと言われています。医療保険を持たない人々がどうしても薬が必要になった時に処方薬を少しだけですが安く買える方法が存在しているのです。それならば、日本の医師に処方箋を書いてもらい、カナダのオンライン薬局から買うという方法も可能ではないかと考えています。それはまた今度、実際に試してからレポートにできればと思います。